先日同室の佐伯とクラヤミ食堂というイベントに参加してきました。
テレビなどでご覧になってご存知の方も多いと思います。
このイベントの一番の特徴は、会場に入る前にアイマスクをつけ、まさに「暗闇」の中で知らない人と同じテーブルに付き、コース料理をいただくというものです。
このクラヤミ食堂は、「こどもごころ製作所」という博報堂さんのプロジェクトで年に4回程度、毎回異なったテーマ・趣向で行われてきましたが、今回は音楽とのコラボレーションということで、歌手の広瀬香美さんがプロジェクトに関わり、【クラヤミ食堂 × 広瀬香美 ~The dinner show~】という生演奏を聞きながらのクラヤミ食事体験となりました。
会場は赤坂にあるANAインターコンチネンタルホテル東京さん。
受付を済ませると、アイマスクを渡され、会場に入る前に着用します。隣の人の肩へ両手を乗せ、列車を作って会場へ入ると、一人一人にスタッフの方が付いて、それぞれ異なるテーブルへ導いてくれます。微妙なカーブを曲がるときに支えた手で方向付けをしてくれるのですが、感じとるのが難しく、従業員研修でも行うことがあるアイマスクでの誘導案内体験ではこういう気づきが得られるのだなと実感しました。
席へ着いても、会場のレイアウトも分からず、自分が会場のどの辺りにいるのか、テーブルが丸いのか四角いのかも分かりません。周りに人が座っているのかも分かりませんでしたが、次第に人が通り過ぎるときの風や体温、料理のかすかな香りなどで気配がつかめるようになります。不安な気持ちが徐々に好奇心に変わり、テーブルの上へ手を伸ばして得られる限りの情報をつかもうとします。
いよいよイベントが開始すると、まずは隣の席、向かいの席の方とクラヤミの中で自己紹介と握手。相手の顔が見えない分、手の暖かさや柔らかさ、声などからどんな人なのだろうと想像を膨らませます。
そして料理がスタートします。食前酒で手探りで乾杯をした後、前菜、スープ、メインと順々に料理が出てきます。ひとつひとつに広瀬さんの曲のテーマが関係しており、広瀬さんが一曲ずつ、料理の前にピアノを演奏しながら歌ってくださるのを聴いたあと、一斉に料理をいただきます。
広瀬さんの歌は、60人の客席では受け止めきれないくらいのパワーがあり圧倒されます。普通のライブではきっと広瀬さんのパワフルな演奏や歌い方に目を奪われてしまったと思いますが、耳だけで聴くと、最初の曲で少し緊張したような声の調子や、広瀬さん自身が持つポジティブな精神性がより強く伝わって来るような気がします。
お料理は、前菜は5つのスプーンに盛られているものを口に運ぶ易しいものから、コースが進むにつれ、徐々にナイフとフォークでお肉を切って口に運んだり、お皿の上の付け合せを探したりと、難易度が上がって行きます。食器の扱いの困難さは想定内だったものの、興味があったのは、見た目の盛付や色合いなど視覚的な要素が大きく影響する料理を、クラヤミで食べたとき、味覚がどのように変わるのだろうかということでした。
予想では、何を食べたかほとんど分からないのではと思っていましたが、むしろ料理への集中力が増したことで香りや食感など視覚以外の要素から得られる情報が沢山あり、想像がどんどん広がって、見た目で得られる以上の料理の味わい方になることを知りました(最後に正解写真が映写されましたが、結構当たっていました!)。
もう一つこのクラヤミ食事の大切な要素は、周りの人とのコミュニケーションです。連れとは意図的に席を離され、周りの人と視覚から得られる先入観なしに会話をしながら食事をすることは、不思議な場の温かさを生み出します。また人によって、暗闇で抱く料理への興味も違い、高級食材へ反応する人、食感を表現する人、料理の色を想像する人、食器の形を味わう人など、本当に様々です。それは自身の想像力を膨らませる助けになります。もしこのクラヤミの食事が1人だったら・・・修行のような食事体験になったでしょう。
加えて、お互いに見えていないという安心感があります。見えていたら・・・食事のマナーが気になったり、アイコンタクトを意識したり、スタッフの動きに目を取られたり・・・家だったらテレビも観ているでしょうか。クラヤミのシチュエーションでは、食べる、話す、聞くというそれぞれのシンプルな行為に集中することができ、それが却って豊かであることに気づかされます。
最後にこのクラヤミでの食事は、デザートの場面でマスクを外します。お互いに顔を見合わせたとき、不思議な親しみを感じている自分がいました。
そして帰り道、見慣れた景色がいつもと違って見え、鮮やかに視界に入ってきました。
この感じ、何かに似ていると思ったら、「旅」です。美味しいものを味わい、見知らぬ人とのコミュニケーションを楽しむ、帰ってくるとリフレッシュして日常生活をまた新鮮な気持ちで始められる・・・
会場で話をすると、リピーターの方が実に沢山います。この体験が一度味わうだけでは終わらない、不思議な魅力を持っているのも、旅だと思えば頷ける気がします。しかし、このクラヤミ体験で感じることはきっと人それぞれ、旅の宝サイトへのこじつけだと思われた方、百聞は一見にしかず、機会があれば是非体験されてみることをおすすめします。
最後に配られたメニュー
企画設計室 山上