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施設の商品力強化の観点においては、客室面積の拡大、露天風呂の導入ほか、水周りのグレードアップ、リビングの拡充整備、ベッドの導入、空調・空気清浄・除湿・加湿機能の拡充、AV機能整備といった主に客室ハード面の強化、充実をうたうケースが多い。一方、ロケーション、自然植生、昼夜の温度差、湿度など施設を巡る環境を生かし個性、特性として訴求している事例は多くない。


旅の主な目的として、地域の自然、名所などの「見物や行楽」が30%と「慰安」に次いで大きなシェアを占めている (10年度日本観光協会調べ) 。地域の自然環境や清涼な大気も大きな観光資源であろう。施設のハード面にウエートが置かれ、施設を取り巻く環境や自然資源の整備、商品としての景色の創造や活用がやや後回しになっていたのではなかろうか。


元来、多くの旅館は、その地域の風土が育んだ建築文化の集大成とも言える建物であり、さらに地域の植生を生かして庭園を造り、取り巻く自然を借景とする、環境と一体となった建物であったと思う。近年、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造が主流となり、箱の中の空調性能が向上するにつれ、地域の自然環境に関係なく調整された空間に滞在することが容易となり、その土地の大気、夜気、あるいは朝の冷気に触れる場が少なくなってきた。


避暑地の高原リゾートでも、避寒地のリゾートでも年間わずか10日に満たない冷暖房のための空調機が必需品となっている。装備されている機能は使うのが当たり前で、外気の方が心地良い季節であろうと窓は遮へいし、空調機はフル稼働することとなる。施設全体にもっと外気を取り入れ自然環境に触れる場の提供が必要ではないか。日中の空気と異なり、地方、あるいはリゾート地の朝夕の気温の変化、香り、祭囃子、せせらぎや、木の葉の揺れる音など楽しみは多い。環境を生かす工夫に満ちた商品化により顧客満足度の向上、環境負荷の軽減、損益構造の改善と"一石三鳥"も可能である。


外気に触れる施設として例えば、開放的な食事処を造ってみてはいかがか。その土地ならではの味覚が並ぶ食卓で、その食文化を育んできた自然環境にもっと身近に触れられればより一層食事が楽しくなる。もちろん悪天候時の代替会場の確保も必要だが。


信州のある旅館で白銀の朝、冴えた空気の廊下を渡り、食事処の部屋に入った。その赤々と熾された火鉢の暖かさの中で戴いた朝餉は今でも忘れられない。こういう体験こそ旅に求めていることではないだろうか。

 

 

 

(観光経済新聞2011年10月15日掲載)

企画設計室 竹原 和利

お客さまが施設を利用されるきっかけ――。それは通常の場合、施設が提供できるもの、すなわち、ホスピタリティ、おいしい料理、快適な空間などソフト面とハード面が複雑に絡み合って形成される。
宿泊施設では、バブル前までは団体客を受け入れることが最も効率的な収入獲得手法となっていたが、バブル後は徐々にその団体比率の減少が続いた。バブル前には6割程だった団体比率はここ数年は3割ほどへと減少している(JTBデータ)。


20年以上前のバブル期に大規模改修を行なった施設の多くは、団体を強く意識した施設となり、その後の市場変化により個人グループ客への対応を迫られていた。
例えば、個人客向けに露天風呂付き客室を導入したり、宴会場を個人客用食事処に転換したり、従来の客室2室を1室に改修して単価アップを図るなど、ハード面の改修で個人グループ客対応が行なわれてきた。
20年を経て再び施設の陳腐化、老朽化に対して改修を迎える時期が東日本大震災や福島原子力発電所事故と重なった施設も多い。


これまでも施設改修時期には、ハード面での改修と併せてソフト面での改革を実施してきているが、この時期、ハード面での大規模な改修は難しい。場合によってはハード整備は最小限度に留め、ソフト面での刷新、改革を主軸とするべき時期ではないか。
従来、ソフト改革には固定観念の払拭、すなわちトップおよびスタッフの意識改革が大きな課題となり、施設側のハード優先改修路線とともに宿泊施設の原点となるホスピタリティの整備が二の次となることが多かった。改めてホスピタリティの充実を図る好機としてこの時期を捉えたい。


実際にホスピタリティを表現、伝える手段としてコミュニケーションがある。
市場の牽引役として注目される中高年齢層や旅慣れた宿泊客の楽しみの1つとして、旅先での地域住民やスタッフとの会話、ふれあいがある。例えば、お客さまが困っている時、どうしたら良いか迷っている時にスタッフから声を掛けられると、親近感が増し、リピートにつながるきっかけとなる可能性が高い。


お客さまの目の動き、動作を意識して見つめることからコミュニケーションが始まる。「すみません」と声がかかる前に、「どうされましたか」と声を掛けられる事が重要である。また、そのふれあいを記憶しておき、後刻「いかがでしたか」というフォローも大事なアクションである。
コミュニケーションのベースには、相手を思いやる気持ちが不可欠であることを忘れてはならない。

 

 

 

(観光経済新聞2011年10月1日掲載)

企画設計室 土屋 武志

自然災害、伝染病、食中毒など緊急事態発生時の対策として経営者はお客さまの安全確保や従業員の安否確認などの対策だけでなく、事業を継続させるための備えが必要である。不測の事態はいつまた起こるともしれず、とにかく備えが肝心で、まずはできることから始めてみよう。


東日本大震災発生後、改めて必要性が唱えられているものの1つにBCP(事業継続計画)がある。
経済産業省中小企業庁の中小企業BCP策定運用指針では、BCPとは企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段を取り決めておく計画と示されている。PDCAサイクルと同様、常に改善し、従業員間で共有し、訓練などの準備をして初めて緊急時に役立つものと解説されている。


こうした情報を参考に自社でもBCPを策定してはいかがだろうか。
まずもって、自社の現状の業務内容を把握し、緊急時の対策として、事業資産の損害を最小限にし、事業の継続を可能とするために最低限行わなければならないことを洗い出すことが必要である。次には、自社の現状の業務プロセスに無駄がないかどうかを点検し、適宜、無駄を省くことが重要だ。そのためには、情報を共有する仕組みや指示が行き届く組織作りも必要となってくる。


こうした取り組みを進める中で、誰もが日常業務を見通すことができるようになれば、結果として労務効率の向上を図ることにもつながる。緊急時は社員一人ひとりの協力を得ずして乗り切ることはできないが、個々人がそれぞれの立場で何がしかの判断を迫られた際には、日頃の教育や訓練がなければ適切な判断を下すことは不可能である。だからこそ、非常時にどう行動するのかルールを決めたマニュアルを作成し、全員が閲覧、共有しておくことが必要である。


また、日常的に整備しておくべきものとして宿泊施設の設備が挙げられる。空調、照明、ボイラーなどの設備は、安全確保のため非常時でも正常に作動させなければならない。だが、コスト負担を伴うため定期的なメンテナンスは敬遠されがちであり、まして先々にわたる修繕計画を立てている施設は少ない。
仮に、休業となれば財務的ダメージも甚大である。自ら不測の事態を招かぬよう、まずは設備の状態を認識し、長期修繕計画を作成することが望ましい。

 

 

 

(観光経済新聞2011年9月17日掲載)

企画設計室 下羽 珠代

ある生命保険会社のアンケート調査によると、今年の夏休みはふるさとに帰省する人が例年以上に多かったそうである。帰省の目的は、「親、兄弟に会いたい」ということで、自分たちのアイデンティティーを確認し、絆を深めたいということであろう。目的はこの他に、墓参りをすることや旅行を兼ねてということも挙げられていた。
夏場に入り、各地の宿泊施設も昨年並みかそれ以上にお客さまが戻ってきたという話を聞く機会が多くあった。大変結構なことと喜ぶとともに、利用されたお客さまが次のシーズンもまた来てもらえる手だてを打ったのかが気になるところである。


さて、日本観光協会が40年以上前から継続している国民の観光旅行に関する動向調査「観光の実態と志向」の中に、過去1年間の宿泊旅行で利用した宿泊施設についての質問がある。宿泊施設はホテル、旅館をはじめ、公的施設や会社の寮・保養所、キャンプ場などさまざまな施設が挙げられている。これも40年以上継続している設問で、もちろん利用する施設の中では、旅館、ホテル(ビジネスホテルを含む)が圧倒的に多い。
昭和50(1975)年代の初めは旅館約50%、ホテル約20%の比率で旅館利用者が多かった。今のようにホテル、ビジネスホテルの軒数が多くなかったという時代背景が、この格差の原因の1つである。


現在はホテル利用者が旅館利用者を15Pほど上回って多いが、旅館利用者とホテル利用者の利用率が逆転したのは、平成10(1998年)年の調査時であった。これまでの間、格差は縮まりつつあったが旅館利用者の方が多かったことになる。利用比率が逆転して10年余り経つが、格差は拡大する一方で、こうした面からも旅行者の旅館離れが指摘できる。併せてこの調査が始まって以来、旅館軒数はピーク時で8万3千軒余り(環境衛生関係営業施設数調べ、旧厚生省)あったが、現在は4万軒台であると言われている。


社会、経済環境の大きな進展、海外旅行者の拡大やインターネットの出現、人口の減少、後継者問題などさまざまな要因が考えられるが、なぜこのように旅館軒数や利用者が減ってしまうのか。旅館経営者を始め業界の諸機関や団体は、旅館の体質改善と次世代に向けたビジネスモデルの構築について真剣に取り組まなければならない。
また、個々の旅館では、客室での料理提供、1泊2食での料金建て、旅行代理店を中心とした販売体制など、何十年と続けてきたやり方を再検討する時期に来ていることを認識してほしい。

 

 

 

(観光経済新聞2011年9月10日掲載)

企画設計室 永池 英治

電通が提唱する消費者行動のプロセス「AISAS」は施設選択のプロセスにも当てはまり、いまや2つの「S」Search=検索、Share=共有は消費者には欠かせないプロセスと言える。特に、最後の「S」=シェアは、購買した人の体験をシェアして行動するというもので、この象徴がいわゆる「クチコミ」である。
以前は限られたコミュニティに対して有効であったクチコミは、現在はご存知の通りインターネット上において誰でも共有できる情報となっている。このクチコミについて、さまざまな現場から「返信をすることで1日が終わる」「的を外れたお叱りがあって困る」などの声をよく聞く。実際にネット担当者はこのクチコミに悩まされその回答に多くの時間を割いているところも多い。


ただし、現在のクチコミ対策は「このような要望が多い」「このような苦情が多い」などに対する対症療法的なものが多い。そもそも消費者側ではなく提供側からすると、クチコミは「お客さまの声」を聞くツールであると同時に、そのお客さまの声からより支持してもらえる施設になるためのツールだ。それを改善した先に何が待っているのかを見失ってはならない。
前述の通り消費者にとってクチコミは絶対的な情報の1つで無視できないことから、不本意なお叱りや指摘であってもさまざまな対応や改善をしているのが実情であろう。一方で、クチコミ対応に追われているということは、実は、このシェアされている情報と提供する側が用意できる、あるいはしようとしている商品との間にずれが生じているということでもある。


体験をシェアされる→読んだ人がその内容を想像する→共感して期待する→思っていたのと違う、というのがクチコミにおける要望や苦情の大半の原因であろうが、提供する側は何の対処もできないのだろうか。
例えば、シェアされる情報を意識的に狭めて、「料理はどうでしたか」ではなく「刺身の量は多かったか」という聞き方に変えられる。

 

しかし、現在のクチコミにはその手法が採用できない。そこで利用したいのが返信コメントである。
「ところで刺身の量はどこにも負けないつもりですがいかがでしたか」といった限定した投げ返しを繰り返すと、それを見た客は「料理」ではなく「刺身の量」に期待する。他方、提供側も刺身の量には期待してもらいたいという意思を伝えることでシェアされる情報を狭められるためクチコミを味方にしやすくなる。
消費者発の情報が溢れそれが真実とされる昨今、提供側はこの行動プロセスを逆手に取ることも必要である。

 

 

 

 


(観光経済新聞2011年8月27日掲載)

企画設計室 小輪瀬 博子

顧客が客室内でどこに安らぎや旅の楽しさを感じ、どのような滞在時間を求めているかを一般的に論ずることは難しいが、バブル崩壊以降、最近でもリーマンショック、東日本大震災、福島原発事故と極めて強い逆風の中にあって、旅に出る人々の感性はどのような変化を見せているのだろうか。


多くの施設経営者に聞くと、共通傾向として①団体客の大幅な減少②家族連れ客、特に夫婦客の増加③クラブ、居酒屋など二次会施設の利用率低下④アーリーチェックイン、レイトチェックアウトによる客室滞在時間の長時間化⑤中~廉価格帯顧客の施設・サービスに対する要求度合上昇、許容範囲の縮小化⑥予約行動の間際化とネットによる客室詳細情報の提供要求増⑦高齢者に対する施設・サービスの配慮増などが挙げられる。宿泊施設としての客室、大浴場や、食事など空間部分の要求が高度化していることは間違いない。


では、宿泊商品の本質である居心地の良い空間とはどのようなものか。

寝室とリビングルームは快適さを要求される。高質な寝具と共にベッドの利用希望が高齢者を中心に増加。これらのリクエストにこたえると、旅館・ホテルカテゴリーがあいまいになり、旅館版ツインルームの情緒確保も一層の工夫を必要とされる。
AV機能という点で考えれば、今回の地デジ移行で客室のテレビも家庭のテレビに負けず劣らず薄型、大画面、高画質など高グレードとなったが、好みの曲を良い音で楽しめる単純な装備も必要になってきた。旅行客層の高齢化とともに、リラックスできるソファーが必要となり、広縁はリビングルームへと大きく変化している。
高グレード客室に装備されていた前室、副室の機能が改めて問われている。
客室の浴室は、利用率の低さからユニットバスの商品力喪失が明らかで、体を洗う機能からバスタイムそのものを楽しむ浴室へと変化している。露天風呂付客室も当たり前となった。近年、スタイリッシュな国産シャワールームもあり、空間を広く感じさせるガラスウォールのバスルームと併せての活用もあろう。


また、ホテルの中でも人気を集める外資系都市ホテルの40~50平方㍍の客室に対し、旅館で一般的な35~40平方㍍の10畳タイプ和室は手狭さが否めない。この現実は、いずれ旅館客室に大きな影響を与えることになろう。
旅館の和空間の在り方は、日本の伝統、文化を継承、体現しつつも洋空間との絶妙な融合と調和を図ることが今後の客室空間の求める姿と感じている。

 

 

 


(観光経済新聞2011年8月20日掲載)

企画設計室 竹原 和利

価値観やライフスタイルの多様化から、独自の旅館のあり方を考えなければ営業を続けることが厳しい。
旅行の目的地となる旅館になれば安定した顧客獲得が可能であろうが、当然、一朝一夕にできることでは
ない。旅行意欲の低下によりマーケットが縮小したため、また、節電対策で企業の就業時間や休業日が
移行し余暇時間が変化し、これまで週末に予約が取れなかった人気の宿ほど平日も稼動を増やしている
ケースもあり、顧客獲得競争は厳しさを増している。


集客増にはリピーター対策と新規顧客の開拓がある。その販促として、誰と、どこから、何を目的として
利用しているのか、その人はいつ、どのように予約しているのか行動パターンの分析が役に立つ。
既存顧客の情報を整理したうえで、ターゲットを設定することが必要である。


旅行に「非日常」を求める人は多いと言われる。非日常は日常の裏返し。日常をとらえることが、
非日常を読み解くてがかりになる。旅館にとっては、ターゲットとする顧客層の日常を把握することで、
その層が期待する非日常を想定した商品づくりができる。
だが、今回の震災での未曾有の事態に多くの人々の日常が大きく変わったと聞く。ターゲットとする顧客層の
日常の変化をいかに適切にキャッチするかが、今後の販促を大きく左右するのではないか。


商品としての旅館を構成する重要な要素に「食」がある。食に対する日常は、この震災でどう変化したの
だろうか。従来のままの対応で十分なのだろうか。その答えを模索するかのように、山形で3軒の旅館を経営
するオーナーが和食のノウハウと地元食材を生かしてプロデュースするカフェ兼定食屋が日本橋馬喰町にある。


有名旅館が知名度のある銀座、赤坂、六本木などの繁華街に料理店を出す例はよく聞くが、最近ショールーム
やデザイン事務所が増えたとはいえ問屋街の印象が濃い町に出店するのだから非常に興味深い。実際に店を
のぞいてみるとわざわざその店を目指しておしゃれな人たちが長蛇の列をつくっているのだから相当な評判だ。
表立った宣伝はなく、どれだけ本業に効果があるのかも不明だが、食に関するアンテナが高い人々の日常に
近づきその変化を敏感にキャッチできることに価値を見出しているようにもとれる。


旅館が地元を離れてお客さまの日常に近づく形で出店する。そこで顧客情報を収集し、それをリピーター対策
にも新規顧客獲得にも活用していく。販促の積極的な取り組みとして注目している。

 

 

 

(観光経済新聞2011年8月6日掲載)

企画設計室 下羽 珠代

旅館における食事場所については、露天風呂付客室の進化に合わせる形で積極的に料理茶屋、
食事処を導入する旅館が多くなっている。これは、お客さまの食事場所に対する考え方の変化による。
特に露天風呂付客室利用のお客さまがホテル的なサービス対応を望むことが増え、チェックイン後に
従業員が客室に入らない、お客さまの都合に合わせるサービス運営を多く取り入れたことによる。


露天風呂付客室のお客さまは、食事場所がそれなりの雰囲気で、個室や間仕切りでプライバシーの
確保がなされていれば、料理茶屋や食事処の食事専用場所に大きな抵抗感はなかったことで
料理茶屋や食事処の導入が一段と進んできた。旅館側は、この料理茶屋、食事処の導入でサービス動線が
向上し、サービス要員の減員が可能となり、労務効率の向上につながった。


また食事場所と厨房との距離が短くなったことにより、料理の選択性の導入が容易となり、温かい料理は温かく、
冷たい料理は冷たくという本来的な提供が比較的容易に実現でき、さらにテーブル上で焼く、炙る、煮るなど
料理のバリエーションが広がり、直火を使って、においや煙を出すといった独立した料理茶屋、食事処ならではの
演出効果も発揮できるなど、料理のメニュー改善と商品力向上につながった。


最近では、料理茶屋、食事処の客席の中心に、調理人が料理を作る場面を見せる演出を取り入れた
オープンキッチンなどを導入する旅館も見られる。
また、料理茶屋、食事処の座席は、当初の個室に畳、座卓の形式に代わって掘りごたつ形式が非常に
多く取り入れられた。畳の個室に低座いすを導入した施設もあったが、最近はお客さまの高齢化や
使い勝手の良さを考慮し、サービスのしやすさからもゆとりあるスペースに大きめのいす・テーブルを
配するレストランスタイルが増えてきた。


また、一部の旅館では露天風呂付客室に複数の部屋を設けて本来の旅館形式の部屋食にする旅館も
出てきており、食事提供も多様化、進化を遂げている。
一方、中・大型旅館では、団体客の減少でコンベンションホールを、個人客に対応するため、料理や素材に
こだわり、オープンキッチンを取り入れたコンセプトブッフェダイニングに転用する施設が多くなっている。


食事の提供場所は、さまざまに変遷しているが、料理茶屋、食事処などを導入する場合、旅館の大切な商品
である料理を、どんなお客さまに、どんな場所で食べてもらうかを旅館のソフトコンセプトとして明快に
設定する必要がある。

 

 

 

(観光経済新聞2011年7月23日掲載)

企画設計室 秋山 光

露天風呂ブームに火がついたのは80年代と言われるが、露天風呂は顧客にとって希少価値、開放感、
心地よさを提供する存在で、温泉の魅力を新発見あるいは再発見させたのがブームの発端となった。
次に秘境ブームが続き、その流れは90年代半ばに露天風呂付客室の人気とともに宿における不動の
商品となった。一時期この流行が終わるのではないかと懸念されたが、さらに進化を続けてきた。


露天風呂付客室は、その非日常性が宿泊者を魅了し、貸切露天風呂などのプライベート感を満足させる
さまざまな「風呂」となり温浴施設にまで波及した。
背景には、バブルが弾け大型投資が難しい時代に必ずヒットする小規模投資の切り札として広く
認知されたことが大きい。実際、温泉地では多くの旅館が装備するのが当たり前となった。


その流れは、洗面、脱衣、シャワーブースなど多機能をできる限りコンパクトに一体化する技術開発や
浴槽の素材・デザインの多様化、果ては、ユニバーサルデザインまでを付加価値とする空間デザインと
機能の新たな調和とともに宿泊料金に見合う空間づくりという難解な解ともなってきた。


一方で、露天風呂付客室をワンフロア全体に配し、専用玄関を整備した旅館内旅館など大型投資も
出現させた。流行は、和風ベットルーム、リビングの付設、床全体のフローリング、複数の内風呂を
装備した和風スイートや離れ形式の露天風呂付客室など終わりなき競合を続け、「露天風呂があればいい」
の時代から、「この旅館のこの露天風呂付客室に泊まりたい」という顧客の要求や選択を引き出し、
目的型で高満足度評価につなげる商品となった。もはや旅館の標準商品といっても過言ではない。


また、客層を2人客に絞り込んだためインターネットでの集客に最適な商品という側面も見逃せない。
この客層は、既存顧客のスライドではない。新規顧客の開発に結び付いたということが極めて高稼働な
客室の原動力となってきた。


しかしながら、早期に導入した旅館には多少の先駆者利益があったかもしれないが、最近は、今まで
見てきたように投資額が大きく、希少価値も薄れ、供給過多に陥っており、宿泊者に価値が分かりにくく
なっているという宿の悩みを多く聞くこととなった。


作れば売れた時代から顧客に厳しく選別される時代に転換した今、露天風呂付客室が依然、高付加価値な
商品力を維持するために出来ることは何か。顧客ニースを精査して費用対効果を見定めた投資を行う。
すなわち計画段階からの十分な調査と検討が何より重要と考える。

 

 

 

(観光経済新聞2011年7月2日掲載)

企画設計室 秋山 光

リーマンショックに端を発した経済危機のどん底からようやく光明が見え始めた矢先の出来事であった。
今回の東日本大震災が宿泊産業全体に与えるインパクトは想定外の大きさである。交通網の寸断、
自粛ムード、出張中止命令、そこへ原発問題の追い討ちでの風評被害。東北・関東地方だけでなく
甲信越・東海地方までが大幅な集客減になり、しばらくこのような事態が続くのは避けられない気配だ。


一方で、震災前を冷静に見つめてみると、国内旅行動向は旅行者数が減少に転じて久しい。
これは人口減と1人当たり旅行回数の減に起因する。この減少を補うことを期待された外国人旅行者は、
今回の震災で日本観光どころではなくなってしまった。すなわち震災前と震災後でも旅行者総数
(絶対数)を増やすことは非常に難しいと言わざるを得ない状況だ。


総数がダメならリピート客(旅行回数)を増やすしか手はない。固定客を持っている施設やリピート率の
高い施設は、これを機会と捉え顧客管理台帳の見直しを行い、販売促進に打って出るべきである。
「特別キャンペーン」「日頃のご愛顧」「会員組織立ち上げのご案内」「女将だより」といった具合に
何でも良いので、自粛ムード漂う顧客の下へお値打ち感のあるものを送り込むのも方法だ。


そうした状況下、ビジネスホテルや素泊まり・1泊朝食プランのある施設、日帰り施設などは震災後の
顧客の戻りが早かったと聞く。震災復興の工事関係者が宿泊しているケースもあるだろうが、
ここでも震災前の傾向が思い浮かぶ。


温泉場にビジネスホテルが増えて高稼働を維持したり、家族連れがビジネスホテルに宿泊したり観光の
拠点が少しずつビジネスホテルに移ってきていたことは否めない。旅行者からみるとその価格が圧倒的に
魅力である。旅館に1泊する金額で3泊できる。


リピート客を増やすことでは、1泊2食は利用金額が高く何回も利用できないが、素泊りなら気軽に
何回でも利用できる。施設からみてもメリットが大きい。人件費などの固定費を大幅に下げることができ、
食材などの在庫も減らせるし、オペレーションの簡素化もできる。


震災のような不測の事態にも軽装備なことが早期の営業再開につながったのではないか。すべての旅館が
1泊2食の市場で戦う必要はない。0泊2食や日帰り特化の旅館があっても不思議ではない。戦略を変え、
市場をスイッチし、競合の少ないところで差別化を考える。現在の建物を持て余し気味にしている施設が
あれば検討に値しないだろうか。

 

 


(観光経済新聞2011年6月25日掲載)

企画設計室 新島 崇

震災後から約3カ月、資金繰りや改善計画の練り直し、さまざまな助成や補助金の申請や適用に
関する相談など、私にとっても怒涛のような日々が過ぎた。金融機関の対応も多種多様なら担当
している経営者の考え方もさまざまで難解なパズルに挑戦し続けている感覚を持つ。


一方、現場に対しては、震災後一貫して
「この機会だからこそできる見直しをしよう。現場はとにかくやってみることが大事だ」と言い続けている。
お客さんが少ないと今の状況を嘆くだけでは日々が無駄に過ぎていくだけ。時間に余裕のある今、
業務改善の好機だ。現場と一緒に頭をひねり模索している見直しの取り組みの一部を紹介する。


この業界では、常々言われてきた基本的な話が「マルチ化」で、できていないところが多いのが現実だ。
ある施設では技術者が行うべき調理以外は、全員がやれるようになろうということになった。
満足度を下げずにマルチ化を進めるには、現場における業務量全体の可視化を進め、どこをマルチ化
すべきかを明確にすることが重要だ。


マルチ化は、顧客滞在中の仕事量がピークに達する時の従業員数を最少人数化する試みでもある。
小さな施設では意図せずこのマルチ化ができているところも多くあるが、一定の客室規模になると途端に
難しくなる。マルチ化したはずの仕事が現場で誰かの通常の仕事として恒常化するからだ。
顧客サービスは最低限のことをすれば良いという視点で探してみると、少しの訓練で全員ができるように
なる仕事は意外に多くあるものだ。


また、別の現場では、「顧客に対してやること」を少し加えてみようという試みもしている。あれこれやろうと
しても忙しくてついついできなかった顧客満足度アップの取り組みをこの際やってみようということだ。
滞在する顧客が少なければ、対応する従業員も少なくなるので忙しさは変わらないと思う人もいるだろうが、
実際に計算してみると最少運営人員であっても顧客当たり労働時間は、よほどの効率化がされない限り
わずか数分だが増加している。その数分で一体何ができるかというと、いつもより数秒一人ひとりに長く頭を
下げる、あいさつの後に少し話をする、顧客の名前を全部覚えるなど、やれることは結構あるものだ。


わずかな行為ではあるが、コツコツと積み立てることで顧客に良い印象を与えるこの取り組みを「満足度貯金」
と呼んでいる。現場も一度身に付けてしまえば、忙しくなっても忘れず続けられるかもしれないという期待を
込めた作戦である。他にもまだ現場にはたくさんの知恵が眠っている。

 

 

 

(観光経済新聞2011年6月18日掲載)

企画設計室 小輪瀬 博子

災後、これまで縁のあった福島県内のある温泉旅館経営者に状況を聞いたところ、地元で有力な2軒の
旅館が構造的な被害で閉館に追い込まれているという。当社調べでも宮城、福島、岩手を中心として
いまだ多くの施設で営業再開の目途が立たない厳しい状況と聞いている。


先の旅館では、一般客が大幅に減少したため、福島県からの要請もあり、震災避難住民を仮設住宅に
入居できるまで低額(県負担)で受け入れている。また、救援関係者の関連特需も発生しているものの、
今後の先行きは見えない。


今年のゴールデンウイークはネット予約などで満館に近い利用はあったが、売り上げでは通常期の
6割程度で、採算ベースにのせるには料金に見合った原価削減はもとより、人件費の低減、
固定費の削減も課題となる。


人件費の低減では、パート化の推進はじめ要員の効率的な采配のほか、国が休業手当などを助成する
雇用調整助成金を活用することも有効である。
固定費の削減では、当社で取り扱いが増えている節水システムやLEDの設置について、イニシャルコストは
かかるものの即効性の高い手法として推奨したい。


福島県では、原発事故による風評被害が深刻で、地域として対策に取り組みつつあるが、こうした被害対策を
含め、今後、政府や金融機関による災害復興支援策の早期の実施が求められる。
金融面では、そもそも旅館業は震災前でも厳しい経営環境にさらされており、採算をとることが困難な中での
運転資金、施設整備資金の確保は一番の課題と容易に察しがつく。


今後、災後の宿泊施設に対する顧客ニーズはどう変化し、何に商品力を求めるべきだろうか。宿泊目的の
多くは、日常を離れてゆっくり滞在することと思われるが、震災を機にボランティアをはじめ社会貢献への
意識も高まっている。JTBは25年ほど前から観光地の清掃活動を行う社会貢献活動を実施し、毎年多くの方に
参加して頂いており、復興ボランティアなど社会性余暇志向の拡大傾向に注視すべきと考える。


宿泊施設の対応としては、単に義援金を募るものではなく、例えば、館内に復興支援コーナーを設け、
宿泊者が東北の生産者発行の「はがき商品券」を購入して応援メッセージを書き込み送付すると、
生産者から商品が届く、という仕組みを紹介するなど、家族や同行者と共に少しでも復興支援のために
時間消費できる場の提供は、今宿泊者に求められていることではないだろうか。
被災地と宿泊者を結ぶ情報提供を、宿としてできる身近な貢献として検討したい。

 

 

 


(観光経済新聞2011年6月11日掲載)

企画設計室 野口弘之

宿泊施設の魅力要素として大きなウエートを占めるのは、サービス(ホスピタリティ)、食事(会場、メニュー)、
客室(快適性、広さ、環境)、大浴場(規模)、付帯設備(宴会場、食事処、駐車場など)がある。
これらの満足度が高ければ、評価点が高くなり、リピーターが増加し、ひいては売り上げアップへとつながる。


数年前、国内メディア系商品、アジア系インバウンド団体向商品など、固定費はかかるものという
固定観念の下、航空座席と同様に空室で販売機会を逃すよりも、安価でも稼動させた方が良いという
判断が当たり前のように蔓延し、インターネット経由での販売がその傾向に拍車をかけた。
かつての右肩上がりの経済成長期のような市場拡大期ではないため、価格面での過当競争に陥り、
その結果、売り上げが減少してくると、当然のように人件費など内製的な経費削減を迫られることとなった。


売り上げ減少→経費削減→サービス悪化(顧客満足度低下)→利用者減少→売り上げ減少、という
負のスパイラルが必然的に起こる。このスパイラルを打破するため、経費削減とサービス良化(顧客
満足度アップ)、売り上げ増を果たす方策として注目を浴びたものの1つが、食事提供の見直し(部屋食
削減)、ブッフェスタイルの導入だ。旅館の場合、非効率、高コストの温床となっていた客室係による
部屋食からブッフェへの変更は、労務費削減にも一定の効果を発揮した。


しかしながら、定着したブッフェにもほころびが目立ち始めた。典型例が、規模と利用者数のバランス。
狭い会場に長蛇の列、広範な会場にまばらな利用者、長いブッフェラインに控え目な品数など。団体客と
個人客のバランスも考慮しておかなければならない。同時に、満足度の向上とともにコスト削減も常に
意識しなければならない。少し前の業界トレンドであった団体から個人へのシフトも一段落し、宿泊需要
低迷期にこそ新たな発想で取り組むべき課題となっている。


宿泊者の嗜好変化に、いかに適切に対応するか。食事提供スタイルは、顧客満足度アップに直結しているか。
柔軟に見直す経営者の姿勢が、今まさに求められている。現行の会場、メニュー、什器、レイアウト、
インテリア、照明、要員配置などが適切かを検証すべき時期ではないか。


宴会場の食事処化の例として、団体専用オープンキッチン(福井県あわら温泉・まつや千千)、プリフィックス型
オープンキッチン(岐阜県下呂温泉・水明館)、ハーフバイキング(北海道十勝川温泉・観月苑)など先進的な
取り組みに今後も注目し学んでいきたい。

 


(観光経済新聞2011年6月4日掲載)

企画設計室 土屋武志

近年、大きなブームとなった商品に「デザイナーズ旅館」と「露天風呂付客室」がある。
前者は、従来の和風建築、旅館建築のセオリーにとらわれることなく、斬新でスタイリッシュな空間を構成し、
後者は利用率の低いユニットバスの代替機能から脱し、高額商品化の目論みとして一般客室にも装備し、
他館との差別化要素とすることで多くの類似商品を出現させた。


いわゆるデザイナーズ旅館の多くは、単に建築空間が優れた新しいデザインというだけでなく、顧客の使い勝手、
居心地、嗜好、感性までを大切にして構成されていることから、ホテル志向の顧客をも吸収し拡大した。
露天風呂付客室では、わざわざ客室から大浴場、露天風呂へ出かけることなく、いつでも家族や同行者と
優れた眺望を楽しめる非日常の新しいバスタイムを提供し、新たな客層を開拓することにつながった。


しかしながら、こうした商品が普及する中、繁盛旅館や話題旅館のデザインを模倣し、雰囲気、システムを
単純コピーした旅館が多く出現したものの、なかなか人気が続かず、類似商品群の中で埋没する状況に至っている。
スキルの向上にはまず模倣からという論もあるが、やはり本物は強い商品力を保ち続けるということか。
自館の顧客にどのような時間を過ごしてもらうのか、そのために何を提供するのか、経営者の顧客への
思い入れの強さ、意思が、商品力を磨き強くする。


昨今、内外を問わず日常の生活に大きな影響を与える事件、事故、紛争が頻発している。こうした事象は、
我々に強いストレスをもたらし、そこから解放されたい、逃れたいと旅に出る傾向を強めていないだろうか。
こうした顧客ニーズを満たすために旅館が提供する時間には2つのパターンがあると思う。


1つは、静かで受動的な「癒し」の時を過ごすパターン。
軽い緊張感を覚えるほどの佇まい、静謐な空気、心地良い自然の音やBGM、照明など。
もう1つは、能動的に「ストレスから開放」される時を過ごすパターン。
五感で楽しみながら箸を運ぶ夕げや朝げ、同行者と交わすなにげない会話、偶然耳にする土地の話題や見所など。


地産池消の肴と地酒を楽しむバーやラウンジ、高級リゾートと同等のエステやマッサージ、広く、ゆったりとした開放感
溢れる湯船。こうした至極の時間の組み合わせが大切で、その強弱、濃淡の組み合わせの巧みさが「良い旅館」を
構成している。模倣ではその濃淡が平板か極端に偏り、物足りなさや疲れの誘因となっているのではないか。
精神浄化が果たせる旅館作りを目標としたい。

 


(観光経済新聞2011年5月28日掲載)

企画設計室 竹原和利

装置産業である旅館やホテルにとって、エネルギーにかかわる問題の影響は大きい。
計画停電をきっかけに首都圏の灯りがだいぶ減った。始めは暗いという印象を受けたが、
すぐに慣れてくるもので、海外はこんなものだったなと改めて日本のまちの明るさを知った。


思い返せば、ネオンや自動販売機だけでなく、店舗や駅に電気がついていることが営業中の
合図であったことに気付かされた。室内照明や看板そのもののオン・オフ(灯りの量)でなくとも、
例えば、自社の特徴を表す個性的なサインをきちんと照らせば、営業中であることが分かり、
開閉合図としての情報は伝わる。コンビニなどの明るさが犯罪の抑止力となることもあるようだが、
十分すぎる照度で室内を均等に明るくする必要もなくなり、消費電力は抑えられる。


機能と装飾をうまく使い分けることで、省エネだけでなく自社イメージの伝達につなげることもできる。
サインの検討はとかく後回しにされがちな事項であるが、スタッフに代わりお客さまを誘導する大事な
ツールであり、建物意匠の骨格であるという見方をすれば、時代と共に段階的に変わる館内を、サインの
デザインをいつもそろえることで違和感は薄まり、最小の費用で館内に統一感が生まれるのではなかろうか。


屋外照明では、部屋の灯りを数えて周辺施設の入り込み状況を確認することはよくあるが、それを逆手に
とってベランダや外壁側を照らすと、利用状況は分かりにくくなると同時に、照明デザインされている
建物は大きな広告搭となり、街に表情を与える。灯りの使い方1つで夜の表情は大きく様変わりする。


1軒のスター旅館が街を牽引するケースもあれば、おのおのは小規模でも面的に整備して観光客を呼ぶ
地域もある。人との絆を強く意識するようになった今、自分は何とつながっているのか、
どこへとつながるべきかを見直すと、初めの一歩が踏み出せるのではなかろうか。


既に取り組みが進んでいる分野であるが、LEDは急速な普及が報道されている。消費電力の抑制、
在庫管理や器具交換の手間を軽減することによる間接コスト減と同時に環境的メリットも大きい。

 

旅館、ホテルは衣食住が整っており、今回もそうであるように災害時には公共的な役割が強いことを
改めて証明した。安全対策の担い手としての必要性もさらに増すことだろうが、明るさにおいては、
「暗さが必要な場所」と「明るさが必要な場所」を機能的に整理した照明計画が重要となる。
省エネとストレスフリーな空間の調和がいま求められている。

 

 

(観光経済新聞2011年5月21日掲載)

企画設計室 下羽珠代

東日本大震災により被災された皆さま、大震災と福島原発事故により
多大な影響を受けられている皆さまに心よりお見舞い申し上げます。


JTBの予測では、今年のゴールデンウイーク(GW)の旅行者数(1泊以上)は
国内旅行で前年比約28%ダウン、海外旅行では約17%ダウンとの新聞発表があった。
国内旅行では、九州や関西方面での予約数が伸びつつあるとの記事も併せて書かれていた。


全国を挙げての自粛ムードも、国民が平常時に戻って元気を取り戻さないことには
被災者や地方も元気になれないとの気運の中、いくぶん活動が活発化しているように見受けられる。
また、電力需要抑制のために打ち出された計画停電も当面の間は延期される方針が出され、計画停電の
指定エリアに入っていた宿泊施設はとりあえずの足枷が一時期取り外されたといったところだろうか。


しかし、トンネルの向こうにわずかな明かりも見えずに、大いなる不安と焦燥感を抱えて過ごしている
被災者はもとより、宿泊施設でも、キャンセルの連絡が続く中で宿泊客がまばらにしか戻ってこない状況では、
経営者が抱える不安や悩みは同じように深く、重たいものであろうことは容易に察しがつく。


特に、直接的な被害を免れた東北地方や関東地方の旅館・ホテルの経営者の皆さまにとっては、
心配されたGWが間際でいくぶん盛り返したとの報道があったものの、消費者の旅行する気持ち、
癒しに出かける心持をどうやって本格的に喚起させるか、その手がかりもつかめずに焦り、苛立ち、
不安感の中で日々過ごされていることと案じている。


政府や金融機関による災害復興支援の政策や支援策、あるいは業界団体による支援、救済要請などが、
矢継ぎ早にいろいろと打ち出されつつあるが、こうした支援策に対してアンテナを高く掲げて自館で
利用できるものは逃さずに利用していくことは非常に大事なことだ。


それともう1つ、経営者が今後も宿泊施設を続けていくためにやらなくてはならないこと、
それはこれまで利用してもらったお客さまに対してメッセージを発信することだ。


「自館は元気に営業しています。こうした時期だから、ぜひあなたに来てもらって明日への英気を
養ってもらいたい。あなたのお気に入りの谷空木の蕾もほころび出しました......」などお客さまの顔を
思い浮かべて、お客さまとともに希望を持って歩み出すのだといったメッセージを送ってほしい。


そのときには、来館時にどうやって喜んでいただくかを、真心をこめて思いを巡らせつつ。

 

(観光経済新聞2011年5月14日掲載)

企画設計室 永池英治

 

生きた証

5月のGWに岩手に帰省してきました。テレビや新聞で見て、ある程度理解して行ったつもりでしたが、
実際に目の当たりにした故郷の変わり様に呆然としました。
幼い頃から見慣れた町並みが消滅していました。
たくさんの人達の「生きた証」が消えてしまっていました。


今回の帰省は高台にあって無事だった実家を、家を流された親戚一家に貸すための帰省でした。
漁業をしている親戚で家と共に船も流されてしまっていましたが、家族6人が全員無事だったこともあり、
すごく明るくて逆に元気づけられて帰ってきました。


私達の仕事は、主に宿泊施設のそこに宿泊に来られるお客様の「憩い&癒しの場所」、
「思い出の場所」を、そこで勤務されている方々の「働く場所」をつくる仕事です。
そのひとつひとつの場所がお客様のそしてそこで勤務されている方々の「生きた証」になっていきます。

そして私達の「生きた証」でもあります。
形で残るその場所と共にそこで出会った全ての人達を含めて「生きた証」です。
これからも心を込めて「生きた証」をつくっていきたいと思います。 

 

磯崎の生きた証 isozaki.pdf

 

 

JTB商事 東日本営業部
建装専任部長  磯崎昌志

ここ連日ニュースで伝えている通り、ニュージーランド南部で発生した大地震で多くの建物が倒壊し

多数の重軽傷者や行方不明者が出ているのを皆様も御承知の通りであると思います。
 

我が日本も有数の地震国であり、建築に携わっている者として建物の安全性の重要さを

改めて痛感いたしました。 

最近の大地震(震度6強以上)を忘れがちですが以下に列記してみました。


1995年の阪神・淡路大震災 震度7

2000年の鳥取県西部地震 震度6強
2003年の宮城県北部地震 震度6強
2004年の中越地震    震度7

2007年の能登半島地震と中越沖地震  震度6強(この年は2回も発生している)
2008年の岩手・宮城内陸地震  震度6強


などがあり震度6弱まで入れると2000年以降ほぼ毎年発生している状況です。

死傷者も発生していますが、その多くが一般住宅の倒壊や落下物によるものと

火災での被災であると思われます。
 

阪神・淡路大震災を除き、不特定多数が出入する特殊建築物(学校・病院・百貨店・劇場・共同住宅など多くの

商業施設で旅館ホテルはこの分類になる)の倒壊は記憶にありません。

一般的に特殊建築物の建物の設計基準は住宅等に比べ厳しく、安全性の高い建物となっています。
どの様な基準や法律で旅館ホテルが建てられているのか以下で説明しましょう。 


まず建物は建築基準法及び同施行令により建物の構造や避難基準・防火基準・排煙基準・非常照明基準・

採光・換気基準・シックハウス基準等など多数の基準を設けて安全性を確保しています。

特に構造の基準は世界1であり、今回のニュージーランド地震で問題になっている建物の偏芯率(建物自体の重心と建物の強さの剛芯とのズレの割合)を0.15以下に抑えるように規定しています。

一般的に偏芯率が大きいと建物にねじれが生じ、揺れも大きくなります。

 

また、消防法及び同施行令により消防関係の安全基準がこと細かに規定され、よく目に付く屋内消火栓や

消火器、各種感知器、警報機、スプリンクラー、誘導灯、非難器具等これまた非常に多くの安全基準で

建物を覆っています。


そのほか環境関係は都市計画法や国土法、宅造法、各種公園法などの規制をうけ、所轄保健所長の

許可も受けなければなりません。

 

また、特殊建築物の建築及び建築設備については安全性に不備がないかを調査をして監督官庁に報告する義務もあります。(建物の規模や都道府県により対象建物が若干変わります)
これは特殊建築物(設備)等定期調査報告と言い、定期的(毎年若しくは2年に1回)に調査を行い

不備があればいつまでに是正するかを報告しなければなりません。
調査項目は大まかに以下の通りとなります。


1)敷地の状況(崖や擁壁の状況 地盤沈下が無いか等) 
2)一般構造の状況(採光に有効な開口部、換気設備の状況など) 
3)構造強度の状況(基礎・土台・柱・梁・外壁・塀・工作物等の欠損、劣化など)
4)耐火構造等の状況(外壁・屋根・開口部等の耐火防火性能や防火区画・防火戸等など)
5)避難設備等の状況(避難通路・避難器具・非常口・排煙・非常照明など)
6)建築設備の状況

   (換気設備・排煙設備の風量測定、非常照明の照度測定、給排水設備機器や配管の状況)

 

他に消防設備定期点検及び防火対象物定期点検などもあります。

対象建築物は建物の規模と都道府県により多少の違いはありますが、非常時に迅速な消火活動と

お客様を安全な場所に如何に早く避難誘導するかをハード・ソフト両面で確認点検し所轄消防署長へ

報告する事を義務付けています。(点検報告は年に1回以上 )

 

このように多くの基準を満たし、安全確保のための定期点検を各施設とも行っており、

常に不測の事態に備えています。

 

それゆえ観光旅行やビジネスで旅館やホテルに宿泊滞在されるお客様、どうぞ安心して滞在なさってください。旅館ホテルは安全な場所です。

 

 

建装部 栗原

もう一つの考え方

以前客室の増改築でお手伝いをさせていただいた旅館のオーナーさんから、今年団体客の料理のグレードアップを図るため、宴会場にオープンキッチンを作りたいとの相談を受けた。当初はただのショウルーム的に造るものと半信半疑であったが、厨房の一部分として作りたいとの要望であり、オープンキッチンのデザインと、そこで提供する料理についてのコンサルティングを受注し、フードコーディネーター及びデザイナーと一緒に業務を実施した。


2009年度のJ社送客実績で宿泊客の形態別シェアをみると、個人客71%、一般団体客19%、学生団体客10%と、ご存知のように一般団体客及び学生団体は全体的に減少傾向にあり、依然個人客のシェアが伸長している。
このような傾向において目線が個人客に集中する中、シェアは低いものの全体の20%弱を占め、J社送客人員で400万人前後の固定客層である団体客に目を向けることには、なかなか気づかない。


料理においてもどうしても個人客に目が向き、食事場所も、個人の場合は部屋食又は食事処で提供し、個人客対応の食事処にオープンキッチンを導入するという旅館は多くなってきているが、今回のように、全体的にシェアの低下が叫ばれている一般団体の食事に目をつけ、しかも宴会場ロビーに一般団体専用のオープンキッチンを新設するという考え方はなかなか出てこない。
これは、一般団体の数が減り、大型旅館ではシビアな過当競争が行われている中、経営者が現場でお客様の動き・対応など日々の動向を見ているからこそ生まれた新しい発想といえる。
現在は、オープンキッチンで夕食・朝食を作るだけでなく、宴会場での調理人の料理の取り分け等のパフォーマンスを実施しており、可なり好評とのことである。

 

団体客料理は、個人客料理と違って差別化が難しい。団体の食事処へのオープンキッチンの導入は、それ自体で差別化が図られるとともに、お客様が宴会場に入場する前にオープンキッチンを覗くことによる期待感の醸成等が望める非常に面白い試みであり、この一般団体客獲得を狙った投資によって、実際に新たな客層を掘り起こし、またリピートを促す大きな商品力となっている。

 

経営者が、流行に流されることなく地道にお客様と接触し、観察していた結果生まれたアイデアであり、大型旅館では一考に価する商品と確信している。

 

企画設計室 秋山

 

akiyama_2.JPG

(オープンキッチン)

 

上海

特注家具を中国生産している関係で、上海に出張することがあります。

この街は、活気があり、今の日本とは比べ物にならない位成長の勢いを感じさせてくれます。

そんな上海についての感想を述べてみます。


上海に初めて行ったのは、2007年12月、会社の研修でした。

その時の印象は、「なんて汚い街なんだろう」というものでした。

空港を降りると埃っぽく、晴れているのに空は灰色、

街路は汚泥とか食べ物かすとかが氾濫し、とにかく汚いのです。

水道水は、どぶ臭くやや緑黄色っぽい色(当然飲めません)、

水の出もあまりよくなく、トイレは流れにくいといった水設備にも難有でした。

車は譲り合いは一切なし、

店でもサービスという言葉が当てはまるような事がない(レストランでの配膳が「食え」というような態度とか)、

自分がよければいいという自己中心の人たちの集まり、こんなところ2度と来たくないというのが感想でした。

 


それから、何度か訪問していますが、今は「活力のある魅力的な街」に思えます。

ハードの部分は見違えるように変化しました。

まず、空気が少しきれいになった事、晴れた日には青空を見ることができます。

また、至る所で再開発工事が行われ、雑多な街が近代的に建替えられています(写真参照)

但し、水事情とサービス精神は相変わらずですが・・・。

 

matsumura.jpg

 

あれだけ再開発が進められるのも国家権力の強さゆえなのかも知れませんが、

それはそれでスピード感をもって実行する意味では、今の時代には「あり」なような気もします。

再開発があれば、われわれ建装ビジネスもあり(当社は中国展開していませんが)、

インテリアデザインも必要になるということで、世界中のデザイナーが上海(中国)に進出しています。

日本の雑誌・専門誌をみても面白いデザインの施設(ホテル・商業施設問わず)は、上海に結構あります

そんな街ゆえ、魅力的な街に感じています。
少しバブルっぽいところがありますが、時代の先端を走っている街、それが今の上海ではないかと思います。


建装部 松村

露天風呂付客室の次は何が売れるんですか?

と、ひと月程前に当社の若手営業マンから尋ねられたことがあります。その時は思いつくままに「これからはリビング付きが注目されるのでは」と答えましたが、改めて書き留めると次のようになります。

 

一般的に客室の果たす機能としては、就寝機能、リビング機能、ダイニング機能(部屋食の場合)、入浴機能等があります。露天風呂付き客室はこの入浴機能が特化したタイプになるのでしょう。これらの機能は独立スペースを取ると果てしなく過大客室となり、料金設定も自ずと高額になってしまいます。リーズナブルな料金設定が前提では、いかにそれぞれの機能を共有できるかが鍵となります。

 

かつては和室の主室一部屋で就寝、リビング、ダイニングの3機能を果たすケースが主流で、客室係さんが部屋清掃、料理出しから布団敷きまで行う重労働がそのバックボーンを構成していました。部屋食(ダイニング機能)は他のお客様を気にせずゆっくり食事ができて良いという反面、朝ゆっくり寝ていられない、朝布団上げ後で客室のほこりが落ち着いていないことに加え、客室係さんの労働力不足、料理温度管理の問題もあり、最近ではこのダイニング機能は食事処に移行しているケースが増えているようです。

 

では、リビング機能ですが、これまでの標準的な客室は主室中央の座卓と座椅子がその機能を果たし、広縁の3点イステーブルセットが補完していました。日常生活においては、和室が少なくなり寛ぐ空間としてはリビングのソファやダイニングのテーブルイスが定着してきています。非日常空間である旅館の客室では、一時的には座卓・座椅子に座っても、ゆっくりできるのはやはりソファやイスなのです。

 

そこで、これからはリビング機能の特化が進んでいくのではないでしょうか。和室+リビングの形態です。ここでの和室は就寝機能でツインベッドスペースに置き換えることもできます。このリビングはかつて広縁に設定していた小作りの3点セットではなく、ゆとりのある洋室空間の中央にどっしりしたソファを設定し、AV機器や充実したドリンクコーナーの設定、さらにはテラスに眺望の良い景観があれば理想的となります。

 

さて、もう一つの新タイプ客室として、河口湖のKホテルで計画した座洋室があります。これは通常の和洋室の和室を洋風仕様の座敷としたもので、ツインベッドと同一空間において意匠面でマッチし、また、床の間がなく座卓は円形で上座も下座もない寛げる空間となっています(月刊ホテル旅館2010年11月号に詳述)。高齢者に腰掛け易いと人気のあるベッドの良さが見直される中、この座洋室もこれから増えてくるのではと期待を寄せています。

 

 

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リビング付客室の事例

 

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Kホテルの座洋室

 

企画設計室 野口

クラヤミの旅

先日同室の佐伯とクラヤミ食堂というイベントに参加してきました。

テレビなどでご覧になってご存知の方も多いと思います。

 

このイベントの一番の特徴は、会場に入る前にアイマスクをつけ、まさに「暗闇」の中で知らない人と同じテーブルに付き、コース料理をいただくというものです。

 

このクラヤミ食堂は、「こどもごころ製作所」という博報堂さんのプロジェクトで年に4回程度、毎回異なったテーマ・趣向で行われてきましたが、今回は音楽とのコラボレーションということで、歌手の広瀬香美さんがプロジェクトに関わり、【クラヤミ食堂 × 広瀬香美 ~The dinner show~】という生演奏を聞きながらのクラヤミ食事体験となりました。

 

会場は赤坂にあるANAインターコンチネンタルホテル東京さん。

 

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受付を済ませると、アイマスクを渡され、会場に入る前に着用します。隣の人の肩へ両手を乗せ、列車を作って会場へ入ると、一人一人にスタッフの方が付いて、それぞれ異なるテーブルへ導いてくれます。微妙なカーブを曲がるときに支えた手で方向付けをしてくれるのですが、感じとるのが難しく、従業員研修でも行うことがあるアイマスクでの誘導案内体験ではこういう気づきが得られるのだなと実感しました。

 

席へ着いても、会場のレイアウトも分からず、自分が会場のどの辺りにいるのか、テーブルが丸いのか四角いのかも分かりません。周りに人が座っているのかも分かりませんでしたが、次第に人が通り過ぎるときの風や体温、料理のかすかな香りなどで気配がつかめるようになります。不安な気持ちが徐々に好奇心に変わり、テーブルの上へ手を伸ばして得られる限りの情報をつかもうとします。

 

いよいよイベントが開始すると、まずは隣の席、向かいの席の方とクラヤミの中で自己紹介と握手。相手の顔が見えない分、手の暖かさや柔らかさ、声などからどんな人なのだろうと想像を膨らませます。

 

そして料理がスタートします。食前酒で手探りで乾杯をした後、前菜、スープ、メインと順々に料理が出てきます。ひとつひとつに広瀬さんの曲のテーマが関係しており、広瀬さんが一曲ずつ、料理の前にピアノを演奏しながら歌ってくださるのを聴いたあと、一斉に料理をいただきます。

 

広瀬さんの歌は、60人の客席では受け止めきれないくらいのパワーがあり圧倒されます。普通のライブではきっと広瀬さんのパワフルな演奏や歌い方に目を奪われてしまったと思いますが、耳だけで聴くと、最初の曲で少し緊張したような声の調子や、広瀬さん自身が持つポジティブな精神性がより強く伝わって来るような気がします。

 

お料理は、前菜は5つのスプーンに盛られているものを口に運ぶ易しいものから、コースが進むにつれ、徐々にナイフとフォークでお肉を切って口に運んだり、お皿の上の付け合せを探したりと、難易度が上がって行きます。食器の扱いの困難さは想定内だったものの、興味があったのは、見た目の盛付や色合いなど視覚的な要素が大きく影響する料理を、クラヤミで食べたとき、味覚がどのように変わるのだろうかということでした。

 

予想では、何を食べたかほとんど分からないのではと思っていましたが、むしろ料理への集中力が増したことで香りや食感など視覚以外の要素から得られる情報が沢山あり、想像がどんどん広がって、見た目で得られる以上の料理の味わい方になることを知りました(最後に正解写真が映写されましたが、結構当たっていました!)。

 

もう一つこのクラヤミ食事の大切な要素は、周りの人とのコミュニケーションです。連れとは意図的に席を離され、周りの人と視覚から得られる先入観なしに会話をしながら食事をすることは、不思議な場の温かさを生み出します。また人によって、暗闇で抱く料理への興味も違い、高級食材へ反応する人、食感を表現する人、料理の色を想像する人、食器の形を味わう人など、本当に様々です。それは自身の想像力を膨らませる助けになります。もしこのクラヤミの食事が1人だったら・・・修行のような食事体験になったでしょう。


加えて、お互いに見えていないという安心感があります。見えていたら・・・食事のマナーが気になったり、アイコンタクトを意識したり、スタッフの動きに目を取られたり・・・家だったらテレビも観ているでしょうか。クラヤミのシチュエーションでは、食べる、話す、聞くというそれぞれのシンプルな行為に集中することができ、それが却って豊かであることに気づかされます。

 

最後にこのクラヤミでの食事は、デザートの場面でマスクを外します。お互いに顔を見合わせたとき、不思議な親しみを感じている自分がいました。

そして帰り道、見慣れた景色がいつもと違って見え、鮮やかに視界に入ってきました。

この感じ、何かに似ていると思ったら、「旅」です。美味しいものを味わい、見知らぬ人とのコミュニケーションを楽しむ、帰ってくるとリフレッシュして日常生活をまた新鮮な気持ちで始められる・・・


会場で話をすると、リピーターの方が実に沢山います。この体験が一度味わうだけでは終わらない、不思議な魅力を持っているのも、旅だと思えば頷ける気がします。しかし、このクラヤミ体験で感じることはきっと人それぞれ、旅の宝サイトへのこじつけだと思われた方、百聞は一見にしかず、機会があれば是非体験されてみることをおすすめします。

 

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最後に配られたメニュー

 

企画設計室 山上

 

こんな時こそ

旅館やホテルを経営している皆様には厳しい経営の時期が続いていると思います。でもこんな時期でも儲かっている施設や、工夫をして元気な施設があります。ちょっとのぞいてみようと思います。

 

ここはある温泉地にある日帰り貸切風呂を運営する施設です。

10棟のログハウス的な建物に露天風呂を2湯設け、室内は10畳ほどの広さを確保しています。日中から家族連れやアベック、おばさんたちのグループなどでかなり盛況です。夕方からは契約している旅館からお客様が来ています。旅館の貸切風呂としても稼動しています。
 

この施設は建築してまもなく4年を迎えようとしていますが借入金を返済して初年度から毎年3,000万くらいの利益を計上し順調に推移しています。この施設を建築しようと計画したときのオーナーの発想はこうです。
「この景気の悪いときに20代30代の子育てに大変な家族が記念日にいくら使えるだろうか?」からはじまりました。朝から車に乗って家族と観光地を見学する。昼に温泉につかってゆっくりした後、家族で食事をし、楽しい思い出を作る。ガソリン代や施設見学費、食事代を含めて総額12,000円ぐらいが限度か。温泉地に行くならいい旅館に泊まってゆっくりお風呂に入り おいしい食事をいただきたい。でも1人2万円も払うのは大変。それなら時間で割れば安く提供できる。お風呂を体験してもらえば温泉地の販促につながる。

こんな発想から出来上がったのがこの施設です。

  

建築的な工夫も凝らされています。自然の木々をいじめないように基礎を立ち上げてその上に施設を乗っけました。こうすると開発費用も安くおさえられ、固定資産になる割合も少なくてすみます。
お客様のために源泉を掛け流して魅力付けをし、利用料金は、1時間よりは2時間、2時間よりは3時間利用するほうが安くなるように設定しました。部屋はルームチャージで人数が多ければ多いほど1人あたりは安くなります。持ち込みも出前も自由で料金もかかりません。運営側としては、サービスもしないので人件費や経費が安く納まります。お客様には使いやすい施設作り、運営側としてはコストがかからない施設づくりができました。

 

景気の悪いときに世の中を嘆いていてもお客様は増えません。このオーナーのように発想をかえ、どうしたらお客様が喜ぶか、どうしたらコストを下げられるかを考えてみるいい機会だと思えばいいのかなと思います。

 

自分だけ得をするような発想ではいいものは作れないと考える毎日です。CO2削減が叫ばれる世の中です。無駄にしている温泉や水、電気などのエネルギーはありませんか。エコを工夫してお客様に喜ばれる施設に変身させるつもりはありませんか。今がそんな発想をする時期です。

 

建装部 中安

 

ペット同伴

我が家に3年前に家族が一人(一匹)増えた。愛犬チロである。彼はマルチーズの3歳半のオスである。 いや、オスであった。今では我が家のかわいい唯一のニューハーフである。

というのも、半年ぐらい前より家中にマーキングをしはじめ家族を悩ませていた。

 

 

そして先日ついに妻のお気に入りのバックにマーキングをしてしまった。

妻は大いに怒り「チロなんか去勢しておしまい!」とのことで、かかり付けの獣医に相談する事となった。

獣医いわく、マーキングは去勢でかなり直り、また病気のリスクも減り犬の寿命を延ばすことも可能で、尚且つ性格もおとなしくなる。との良い事尽くめで手術をする事を決断した。

1月末の土曜日に入院させて、ついに我が家のニューハーフの誕生となった。

ニューハーフになってから約1ヶ月が過ぎたが、マーキングは未だ減らずあまり効果が無かったような気がする。性格も相変わらず元気いっぱいで、暴れ回っている。

 

かわいいかぎりである。

 

 

ところで、我が家のようにペットを家族同様に接している人は確実に増えている。休日もペット中心となり散歩の合間に買物を行う、なかなかペットを置いて外出できない。

そんなときにペット同伴の店や、宿泊施設がもっとあれば良いなと思うのは私だけではないだろう。ペット関係の雑誌も取っており、その中にもペット同伴OKの施設紹介も散見するが、まだまだ少ないと思われる。

 

 

これからの商業施設は高級志向か、低価格化の2極化に加えて、第3極の付加価値(ペット同伴やその他)の商業施設が生き残っていくのではないだろうか。

 

特に高齢化や核家族化が進む中で、犬猫等をセラピーアニマルとして飼う家族は確実に増えると思う。このニーズを的確に捉え、ビジネスチャンスとすることが不可欠であると思われる。

その一つの鍵が、商業施設側の懸念であるキズや汚れ・臭い・雑菌・掃除等のマイナス面をいか減らすかであると思う。

 

 

自分もペット同伴OKの商業施設を増やす為に、施設のマイナス面を軽減できる施工方法等(たとえば光触媒による消臭・殺菌)をもっと研究・勉強していきたいと思っている。

 

 

建装部 栗原

本を落ち着いて読める場所

最近、ある旅館に宿泊されたアンケートを読んでいて「客室以外で本を落ち着いて読める雰囲気の場所を提供してほしい」というものに目が止まりました。
日常生活から離れて、好きな読書三昧という上質な時間を過ごしたいという気持ちが伝わってきましたが、旅館そのものが旅行目的となってきている今、多くの宿泊滞在者の求める共通項ではないかと思います。

その滞在イメージとしては、自然環境のよいライブラリーコーナーで、どっしりとしたソファーに座って、こだわりのハーブティを飲みながら好きな本を読み、日常生活には無くなってしまったしっとりとした「和風」空間の中で温泉情緒を楽しむといったところでしょうか。最近は談話室の整備が進み、無料コーヒー、ライブラリー、真空管アンプでの音響、リラックスチェアーの設定など差別化空間の提供が増えつつあります。

そのため、宿泊ユーザーにとっては、宿泊先の正確な情報の要求レベルはますます高くなり、料理の細かい内容、泊る部屋の内装、客室備品やアメニティ関係まで詳細にわたっています。ある調査によれば、ネットユーザーの半数近くが予約サイトを利用して宿泊申込をしているといい、さらに予約サイトを使った人の6割以上が口コミ情報を参考にしているそうです。

旅館経営サイドとしても、メイン客層の求めるきめ細かな宿泊商品をどこまで提供できるか、さらには、その情報を自館のホームページでいかに正確に提供できるかが問われていると思います。
個性化がますます進んだ宿泊ユーザーに、施設装備の制約はあるものの、滞在提案の中からチョイスしていただけるような、宿泊商品を提供するお手伝いができればと思っています。
 
 
noguchi.jpg企画設計室 野口

最近は、世の中のスピードが加速度的にどんどん早くなっている為、常に新しい発想と考えがなければ、生き残れない時代だと思います。

 

7~8年前に作られたビジネスホテルは、最低限の広さで客室を数多く作ることで収益性を高めるというモデルが主流でしたが、最近は価格競争にさらされ苦戦が続いていると聞いています。

 

シングルルームのベッドサイズもW1200からW1400に広くなり、更にはW1600のホテルも出始めています。ユニットバスサイズも1216から1418へ大きくなったり、高機能ユニットシャワーが設置されたりと、ゆとり・安らぎがキーワードとなって進化しているようです。宿泊者にとって魅力の少ないホテルには、残念ながら、価格競争しか残っていないことになります。

 

 

当社に客室改装の提案依頼があった場合、ただ表を変えてきれいにするだけでは、ホテル事業主様の為にはならないと考えています。商品としての客室のあり方・宿泊者の立場に立ったお部屋のあり方から提案するよう心がけています。

 

その中で、この時代の流れにいかに対応するのかが最大の課題です。アンテナを高くはり、情報収集を広く行い、常に自分を磨いていかなければならないのです。

 

情報収集については、ネットにある情報もありますが、私が気にいっているのは人と面会して得る情報です。いろいろなステークホルダーと面会して声を聞くことは、デジタルな時代にあって効率が悪いと考える人も多いでしょうが、時の流れが速い時代だからこそアナログ的なコミュニケーションが重要だと思います。

 

この仕事の楽しさのひとつが人との出会いやコミュニケーションです。時代遅れといわれても、大切にしていきたいと考えています。

 

建装部 松村一美

世界中にはいろいろな形態のホテルがある。トルコのカッパドキアにある洞窟のホテル、アイスランドの氷のホテル、シャトー(古城)を再生したホテルがあれば、バロックやロココ調の豪華なパレス(宮殿)のホテルまである。更にはラスベガスにはカジノやアミューズメント施設が充実したホテルやオーランドのディスニーにはキャラクターに囲まれるようなホテルまである。私は海外旅行が好きで、旅先の宿泊先ではやはりこのようなホテルに泊まりたいと思っています。旅先での土地の風情を感じることができるからです。洞窟のホテルなど多少の不便はありましたがそれも風情です。

 

 

 外国から日本に来られる観光客が好んで日本旅館を選んで泊まられる話を聞きます。インターネットの普及などで容易に検索し、予約を取ることが出来るようになった事も大きな要因ですが、日本に来たら日本の文化に触れられる旅館に泊まりたいという気持ちは良く分かります。お風呂の入浴、割り箸の使い方、畳の上での生活など、他国ではあまり慣れていない風習がたくさんあるのに、最近の外国人観光客の方々は不慣れながらも問題なく旅館を使用しています。

 

 

 そんな中でも昔から旅館に根付いている当たり前のサービスに、「料理の部屋出し」がありますが、このサービスはホテルで言う「ルームサービス」といって大変喜ばれるそうです。客室で和食の料理を食し、SPA(温泉)で疲れを癒し、日本の情緒を感じられる畳の和室でお茶を振舞ってもらう。おまけに日本の伝統的な浴衣を着せてもらい、更には就寝前に布団まで敷いてもらえる旅館には、それがサービスに至るまで料金にすべてインクルードされているのでよほどリーズナブルに思えるのかもしれません。

 

 

 最近の日本には和室と呼ばれる施設が少なくなってきました。住宅やマンションからも和室が消えつつあり、老舗の料亭が廃業したり、旅館がスタイリッシュになったりしています。畳の上に大の字で寝転がる心地よさを感じられることが少なくなってきました。旅館の和室にはこの日本の心地よさというものを訪日外国人のためにもいつまでも大切に守っていってもらいたいものです。

 

 

 

建装部 名古屋駐在 棚瀬 ES144.JPG

国内の新型インフルエンザの患者数が集団感染等加速度的な増加を示しており、今年10月からのパンデミックが憂慮されている。5月から6月頃の近畿地区に於ける予約の大量キャンセル等の事態が思い出される。


一方、沖縄県では全国平均値の20倍という異常な発生率を示していたが、ようやく減少に転じたと報道されている。
宿泊産業にとって、景気低迷による厳しい事業環境が続く昨今、更に大きな影響を与えるこうした事態はその推移に注意したい。


このところ、そのインフルエンザ対策であろうがウィルス除去、抑制効果の高い空気清浄機の販売が急激に増加し、都内の家電量販店でも幾つかのぞいたが品薄になっているとの事である。
逆にホテル・旅館にとっては、客室にこうした空気清浄機を装備している事をセールスポイントにできるとも考えられるが、コスト面からは頭が痛い課題である。


最近、泊まった旅館でマスクをした仲居さんに食事サービスを受けたが、何とも嫌な違和感がした。
一方である宿では従業員の同居家族に新型インフルエンザが発生した場合、その従業員を7日間の出勤停止としたそうである。ギリギリの要員で運営する中、こちらも厳しい対応を迫られている。

 

企画設計室 竹原