建装の仕事の関係で各地の旅館に宿泊する機会に、最近特に旅館で気になることは、和室の床の間にテレビや金庫が大威張りで鎮座まし、床の間自体が無駄なスペース或いは物置きスペースとなっていることが多々あり、床の間本来の機能が全く失われていることです。非常に残念に思っております。
物の本に依れば、本来和室の床の間は、客人をおもてなしするために季節に合わせた掛け軸や香炉、花入れが置かれ、店主の心配りを示す存在であり、また、床の間は、和室を構成する要素の中で最も伝統的な法則があり、格式が重視され、和室の象徴として大切にされているということであります。
今年中部地方の旅館さんの増改築計画をお手伝いすることとなり、全体は民芸調を基調に設計計画を実施ししていただきましたが、和室では特に設計段階で、小さくとも是非床の間を設置して欲しい旨お願いし、本格的ではないにしろ和室にしっかり床の間を設けていただきました。やはり和室に床の間があり、掛け軸を掛け、季節の花を置くと非常に客室として格調高く、凛とした客室となり、館主がお客様をお迎えし、もてなす雰囲気が醸し出され、提案して本当に良かったと思っております。
最近の洋風化された和室の生活空間の中では、無駄な空間で省略され、季節を感じることが無くなった床の間を、少なくとも旅館の和室にだけでも設け、和室のしきたり、和室の礼儀作法等が学習できる日本独自の旅館文化と和の伝統文化を少しでも永く残しておきたいと思っております。
企画設計室 秋山