仕事人コラム

HOME > 仕事人コラム

最近の厳しい経営環境を受けて宿泊施設では、新たな投資が難しい状況で、既存のハードのままで商品力の強化を図ることが必要となっている。
商品力の強化を図るためのポイントは、まず、館内外の清掃など基本的な衛生管理を徹底すること。次に、眺望、温泉など独自の強みを明確化してアピールすること。3つめは、お客さまとのコミュニケーションを強化することだ。当たり前に言われることだがちゃんとできているところは意外に少ない。


他にも、客室の備品などで商品力強化は可能だ。例えば、数種の枕のチョイスや小さい子ども用の昼寝セットの用意など、その宿に泊まるお客さまの期待に合致したサービスを提供すれば、費用負担も比較的少なく、お客さま満足度を高めることできる。
さらに、滞在において付加価値を左右する料理やスタッフの心地よい接遇などは、商品力強化を図る重要な要素で、絶え間なくブラッシュアップすることを常にお客さまから求められている。


このようにさまざまな商品力強化の方法があるが、いずれにも生かしたいのが、先ほど触れたお客さまとのコミュニケーション、すなわち会話を充実させるということだ。そのきっかけにぜひ取り入れたいのが「二十四節気」だ。 
二十四節気とは、1年を24等分し、季節をさらに細かく示す基準として設けた日を個別の呼び名で表現したもの。例えば、これからなら立冬11月7日、小雪11月22日、大雪12月7日、冬至12月21日などがある。また、季節の変わり目を八節(冬至・夏至の二至、春分・秋分の二分と立春、立夏、立秋、立冬)と呼び、子供に馴染みのある節句は、人日、桃、端午、七夕、菊と5つあるので五節句。他にも雑節(節分、彼岸、八十八夜、入梅、半夏生、二百十日など18の季節がうつろう節目)がある。


この夏に宿泊した地方都市のビジネスホテルでも、客室に短冊を2、3枚置き、その短冊を飾りつける笹竹をロビーに設置する七夕イベントを催していた。旅館でも、秋は、すすき、団子など十五夜の装飾が一般的だが、これも二十四節気の発想だ。いずれも顧客との会話が弾むこととなる。

 

このように二十四節気は、身近であっても家庭ではそれと意識する機会が本当に減っている。せめて、伝統文化を守り続けることを期待された旅館くらいは、役割として二十四節気をお客さまとの会話に生かす発想を持ち続けてもらいたい。古くて新しい取り組みであり、費用負担も少なく独自性を出せるのも魅力である。

 

 

 

 


(観光経済新聞2011年11月5日掲載)

企画設計室 秋山 光

普段、街中で和服を着ている人を見かけることがほとんどなくなり、正月や成人式、卒業式などの特別な服装となってしまった。同じ街中で目にする大手ハンバーガーチェーンは、厳しい状況の外食産業でもひとり勝ちと言われる食の西洋化の代表例であろう。一方で、個人の住まいは、フローリングが一般的となり、和室よりも洋室が主となってしまった。

 

 

ところが、このように衣食住の西洋化が進むなか、今も昔も変わらない日本人的な行動パターンがある。それは、家に帰ると玄関で「靴を脱ぐ」行為である。
どこの家でも当たり前のように玄関で靴を脱ぎ、スリッパ、または素足で私的な生活を過ごす。言わば靴の着脱によって公私の切り替えを行っているのである。この行為は、いくら日本人の生活に西洋化が浸透、定着したとしても、変わらずに存続していくだろう。


時代劇でたまに目にする光景だが、旅籠では玄関で旅人の足を洗ってから素足で館内に上げていた。
しかしながら、現代の旅館では、ホテルのように靴を履いたまま客室に案内する形式が主流だ。部屋で浴衣に着替えスリッパに履き替えて館内で過ごすことになるが、素足になっても先程土足で歩いた床なのでいま一つくつろいだ気にならない。素足になることで公私の切り替えができるととらえるなら、「くつろぎ」がテーマの宿にとってこの行為の提供はこだわるべき重要な点に思えてならない。


また、素足となると床材も限定されるが、一般的には畳や板敷きで竹タイルや籐マット、イグサカーペットというのもある。板敷きの場合には、清掃などのメンテナンスが容易だが、冬場の冷たさを解消するため床暖房にしたり足袋を用意したりする必要がある。
加えてくつろぎ効果と共に、素足の場合は別のメリットもある。防汚効果である。従業員も素足で歩くので汚れを気にして自ら注意をするようになり汚れやゴミが少なくなるのである。 
さらに、お客さまにとっては、館内どこでも靴やスリッパの履替えが不要(トイレは除く)でわずらわしさがなくなり開放的になるという効果も期待できる。


ただし、ここで一番の課題は玄関で預かる靴の整理だ。収容の少ない旅館ならともかく、大型旅館となると下足番が必要となり、チェックアウトが重なると玄関が混雑する恐れがある。
日本のホテルも客室に玄関を設け、室内を素足で過ごせるようにしたらと常々感じる。特に、ビジネスホテルならその効果は大きい。なぜなら、スリッパが常備されていても、風呂上がりや寝起きは面倒で素足で歩いてしまう人は私だけではないと思うからだ。

 

 

 


(観光経済新聞2011年10月22日掲載)

企画設計室 高橋 慎一郎

施設の商品力強化の観点においては、客室面積の拡大、露天風呂の導入ほか、水周りのグレードアップ、リビングの拡充整備、ベッドの導入、空調・空気清浄・除湿・加湿機能の拡充、AV機能整備といった主に客室ハード面の強化、充実をうたうケースが多い。一方、ロケーション、自然植生、昼夜の温度差、湿度など施設を巡る環境を生かし個性、特性として訴求している事例は多くない。


旅の主な目的として、地域の自然、名所などの「見物や行楽」が30%と「慰安」に次いで大きなシェアを占めている (10年度日本観光協会調べ) 。地域の自然環境や清涼な大気も大きな観光資源であろう。施設のハード面にウエートが置かれ、施設を取り巻く環境や自然資源の整備、商品としての景色の創造や活用がやや後回しになっていたのではなかろうか。


元来、多くの旅館は、その地域の風土が育んだ建築文化の集大成とも言える建物であり、さらに地域の植生を生かして庭園を造り、取り巻く自然を借景とする、環境と一体となった建物であったと思う。近年、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造が主流となり、箱の中の空調性能が向上するにつれ、地域の自然環境に関係なく調整された空間に滞在することが容易となり、その土地の大気、夜気、あるいは朝の冷気に触れる場が少なくなってきた。


避暑地の高原リゾートでも、避寒地のリゾートでも年間わずか10日に満たない冷暖房のための空調機が必需品となっている。装備されている機能は使うのが当たり前で、外気の方が心地良い季節であろうと窓は遮へいし、空調機はフル稼働することとなる。施設全体にもっと外気を取り入れ自然環境に触れる場の提供が必要ではないか。日中の空気と異なり、地方、あるいはリゾート地の朝夕の気温の変化、香り、祭囃子、せせらぎや、木の葉の揺れる音など楽しみは多い。環境を生かす工夫に満ちた商品化により顧客満足度の向上、環境負荷の軽減、損益構造の改善と"一石三鳥"も可能である。


外気に触れる施設として例えば、開放的な食事処を造ってみてはいかがか。その土地ならではの味覚が並ぶ食卓で、その食文化を育んできた自然環境にもっと身近に触れられればより一層食事が楽しくなる。もちろん悪天候時の代替会場の確保も必要だが。


信州のある旅館で白銀の朝、冴えた空気の廊下を渡り、食事処の部屋に入った。その赤々と熾された火鉢の暖かさの中で戴いた朝餉は今でも忘れられない。こういう体験こそ旅に求めていることではないだろうか。

 

 

 

(観光経済新聞2011年10月15日掲載)

企画設計室 竹原 和利

職業柄か「お勧めの旅館があったら教えて」とよく聞かれる。この質問に答えるのが、実はとても難しい。質問者は単純に「いろいろな宿を見て知っているのだろうから、いい宿があったら教えてよ。今度泊まりに行くから」と気軽に考えているのだろうが、簡単に「○○旅館」とお勧めの宿の名前を言ったがために、質問者、宿、それに筆者の3者が不幸になるなんてことが考えられる。理由は何か。


質問者の好みと筆者のお勧めがミスマッチを起こすからであり、人により希望する宿のタイプが違うのは言うまでもない。当然、旅行者の希望と宿の提供する商品がマッチすれば双方ハッピーになれる。だから今では必ず質問者の好みを聞くようにしている。筆者もアンハッピーにはなりたくないので。
①誰と行くのか②施設規模はどのくらいが好みか③予算はどのくらいか④何(風呂、食事、サービス、雰囲気の4項目)に重点を置くか――である。特に、④が重要であり、例えば、風呂や雰囲気などハードが売り物の宿にサービスや食事などのソフトを重視している人を紹介してもクレームになるだけだし、泉質重視の人に循環ろ過の宿を紹介しても申し訳が立たない。


ここで宿の経営者に改めて熟考してほしいことがある。「お客さまは自館に何を求めてきているのか」「お客さまの希望と自館の強みはマッチしているか」「自館は何が強みなのか」と。ここに集客および顧客評価を上げるヒントが隠されている。

 

SWOT分析なるもので自館の強み、弱みを一度は整理したことがあると思う。その結果、自館の強みとお客さまの要望が合致しただろうか。結構な頻度で違った結果が出ることが多い。つまりは、意外に自館にマッチするお客さまの要望に気付かないでいるケースが相当に多いのである。お客さまが自館を選んだ理由こそ最大の強みであり特徴である。それをアピールポイントとし、自館の強みや特徴を一言で表現できる宿は繁盛しているところが多い。お客さまもはっきりとその強みや特徴を支持して来館し、さらにはリピータになっていくのである。


露天風呂付客室などの流行りモノを追いかけたり、成功した他館を真似るのも良いかもしれない。しかし、今だからこそ投資だけに頼ることなくしっかりと足元を見つめ、一朝一夕でできない強みを見つけ磨き上げていく時ではなかろうか。 
料理の質、量、見栄え。食事場所の雰囲気。従業員の的確な受け答えや会話を弾ませるコミュニケーション能力など。磨き上げる要素はいくらでもある。自館の強みを確立しよう。

 

 


(観光経済新聞2011年10月8日掲載)

企画設計室 新島 崇宏

お客さまが施設を利用されるきっかけ――。それは通常の場合、施設が提供できるもの、すなわち、ホスピタリティ、おいしい料理、快適な空間などソフト面とハード面が複雑に絡み合って形成される。
宿泊施設では、バブル前までは団体客を受け入れることが最も効率的な収入獲得手法となっていたが、バブル後は徐々にその団体比率の減少が続いた。バブル前には6割程だった団体比率はここ数年は3割ほどへと減少している(JTBデータ)。


20年以上前のバブル期に大規模改修を行なった施設の多くは、団体を強く意識した施設となり、その後の市場変化により個人グループ客への対応を迫られていた。
例えば、個人客向けに露天風呂付き客室を導入したり、宴会場を個人客用食事処に転換したり、従来の客室2室を1室に改修して単価アップを図るなど、ハード面の改修で個人グループ客対応が行なわれてきた。
20年を経て再び施設の陳腐化、老朽化に対して改修を迎える時期が東日本大震災や福島原子力発電所事故と重なった施設も多い。


これまでも施設改修時期には、ハード面での改修と併せてソフト面での改革を実施してきているが、この時期、ハード面での大規模な改修は難しい。場合によってはハード整備は最小限度に留め、ソフト面での刷新、改革を主軸とするべき時期ではないか。
従来、ソフト改革には固定観念の払拭、すなわちトップおよびスタッフの意識改革が大きな課題となり、施設側のハード優先改修路線とともに宿泊施設の原点となるホスピタリティの整備が二の次となることが多かった。改めてホスピタリティの充実を図る好機としてこの時期を捉えたい。


実際にホスピタリティを表現、伝える手段としてコミュニケーションがある。
市場の牽引役として注目される中高年齢層や旅慣れた宿泊客の楽しみの1つとして、旅先での地域住民やスタッフとの会話、ふれあいがある。例えば、お客さまが困っている時、どうしたら良いか迷っている時にスタッフから声を掛けられると、親近感が増し、リピートにつながるきっかけとなる可能性が高い。


お客さまの目の動き、動作を意識して見つめることからコミュニケーションが始まる。「すみません」と声がかかる前に、「どうされましたか」と声を掛けられる事が重要である。また、そのふれあいを記憶しておき、後刻「いかがでしたか」というフォローも大事なアクションである。
コミュニケーションのベースには、相手を思いやる気持ちが不可欠であることを忘れてはならない。

 

 

 

(観光経済新聞2011年10月1日掲載)

企画設計室 土屋 武志

ネット経由での宿泊申し込みが若い人を中心に急速に増えている。ネット上で簡単に情報が検索でき、予約までできる手軽さが利用を牽引している。
宿泊目的に合った宿を探す場合、ネットエージェントのサイトから地域、料金で検索する場合が多いが、料理、サービスなどの内容や質までは分かりにくいため、詳細な施設のホームページで確かめることになる。その際、どんな特徴があり、どんな利用目的に合った施設なのか分かると選定しやすい。


これを施設サイドからみると、宿の特徴を表現するためにはお客さまのターゲットを絞り込み、自館の売り物(特徴)を明確に打ち出していくことが重要となる。そのための手法として統一テーマの演出がある。
一昨年お手伝いした山梨県内の宿の投資事例では、他に事例の多いアジアンテイストとは異にするトロピカルテイスト(南太平洋のリゾートイメージ)を基調とした「光と風と水」をテーマに、建築意匠はじめ、家具・備品、サイン、装飾品、ユニフォーム、アメニティ、BGM、料理、館名や館内施設のネーミングに至るまで徹底して統一を図った。統一化により宿の特徴が明確となり、居心地のよい宿空間が創出される。


特に、力を入れたいのは玄関アプローチである。なぜなら、お客さまが来館された際に抱く第一印象に大きく影響を与えるからだ。お客さまの来訪目的が日頃の疲れを癒すためで、非日常性や異日常性を求めている以上、一般家庭の日常の生活感が伝わると興ざめしてしまうこととなる。
一例だが、山形県の著名旅館のオーナーが、お客さまのよりよい第一印象を得るために玄関先の正面のどこに置物を置いたら良いか首を傾げて決めかねていたことが印象深い。


玄関アプローチではないが、お客さま目線についてこだわる京都の老舗旅館の女将から聞いた話がある。京都の伝統的な和文化を大切に考え、特に客室ではテレビ、冷蔵庫、電話などの機械装置を扉や布カバーなどでいかにお客さまの目線からはずすか苦心し、客室からの雪見障子越しの坪庭の見え方にも注意を払っているとのこと。お客さまの目線を大切に考えることは当然のようでも、極めるとなると難しいものである。


このようにお客さま目線にこだわれば、玄関でも館内でも演出の統一性は大変重要だ。費用負担少なく統一感を演出するならアメニティからでも始めたい。
手前みそで恐縮だが、当社の業務用品サイト「プロスペ」では、統一性を演出するアメニティ以外の商材も豊富に取り揃えており、参考になれば幸いである。

 

 

 


(観光経済新聞2011年9月24日掲載)

企画設計室 野口 弘之

土地家屋調査士にあこがれて

その日は突然にやってきた。某百貨店建装部の事業撤退の日である。その日の翌日から営業中止つまり受注中止である。営業担当者にとって「営業するな、受注するな」というのは、仕事をするなというのと同じ意味である。報告を受けた瞬間は何を言われているのか理解できず、ただ「何かが終わった」という思いが頭の中で浮かび上がったにすぎなかった。私は建装推進課なる部署にいたので次の日から仕事が180度変わるということはなかったが、仕事の内容が受注推進ではなく、撤退の推進に変わったことはまちがいなかった。


それは2004年の手帳をみると8月6日(金)の午後に社員説明会開催「撤退」と書かれているので多分その日に正式な説明会が開かれたと思う。2002年に退職届を提出して止められていた私にとっては退職転職の日がとうとう来たとしか思えなかった。ところが私のその日は2005年の9月までやってこなかった。


事業撤退が決まってからは定時に帰宅する日が続いた。それまでは休みも取れない仕事中毒のような日常を送っていたので自分の時間が増えて時間を持て余すようになった。退職届を受理はされていたが退職日を延長されていたので、「そろそろ退職日を決めてください」と会社に申し入れたが、担当役員からは「事業終息によって法的社会的に会社がお客様に対して果たすべき責任を果たせる体制を君には作ってもらわなければならない」という指示がでて、一番先に退職できると思っていたにもかかわらず、退職する条件を与えられてしまった。


建築設計工事などの仕事に限界を感じ始めていた私は、以前からあこがれていた土地家屋調査士を目指してみようかと思い、2004年の年明けに通信教育講座に申込みをして勉強を始めていたのだが、段ボール2個に教材が山のように送られてきて内容をみると受験できるまでにしなければならない勉強時間の目安が≒500時間とあり、毎日2時間勉強して土日に集中的にやっても2004年の8月22日の試験には間に合わず、あきらめかけていた。しかし、これからは時間が取れるのを幸いに本格的に勉強を始める気持ちになった。今の自分に嫌気がさし仕事に意欲を失いかけていたこともあり、新しいことを始めて自分を変えたかった。


翌年2005年の8月の試験をめざして本格的に勉強を始めようとした私は、夜間の専門学校に入学して本格的に勉強することにした。約10か月間、週2日は夕方7時から10時まで授業を受け、日曜日は毎週模擬試験を受けるという日が続いた。幸い同じ年代の受講者が3人いてすぐに友達になり、最初は何を言っているのか専門用語がわからなかったが、少しずつ理解出来るようになり毎日が充実したものになっていった。


しかし、模擬試験の点数はなかなか上がらず合格ラインは見えなかった。合格率が5%~10%という資格試験でもあり50歳を超えてから受験するには難しすぎる試験かと思った。民法と不動産登記法の講義をしてくれていた弁護士でもある校長先生の講義が面白くなっていたので一番前の席にいつも座ってなにかと質問をしたりして講義を楽しんでいるうちに、あっという間に2005年の6月頃にはほとんどのカリキュラムが終了してしまい、8月の本試験にむけての特訓が7月に始まった。


その頃、会社の担当役員から与えられていた「会社の社会的責任を果たせる仕組みづくり」もほぼ完成し、担当役員が7月末で突然退社ということになり、私にも会社の本部人事担当から突然呼び出しをうけて、「退社してください」という要請があり、会社と仕事どころではなくなっていた。
しかし、模擬試験では合格ラインにもう少しという感じだったので、受験前の特訓合宿に参加することにした。箱根の湖のほとりで5日間ほとんど外出せずに朝から夜中まで集中講義と模擬試験答案練習の繰り返しでまさにこの歳で受験生かと自分でも呆れていた。


しかし、受験の神様はほほえんではくれなかった。2005年8月21日(日)の試験では無残にも合格はならなかった。一緒に勉強してきた3人も不合格となり試験当日の夜に専門学校で集まって回答速報説明会では、4人で来年の再受験をめざしてまた1年間頑張ることを誓った。


それからの1年間は、10月1日にJTB商事への入社したことで勉強は二の次になりかけていた。でも日曜日の答案練習会には毎週かかさず学校に通うことにした。それまでやってきた教材を繰り返し読み続けることで覚えたことを忘れないようにするのが精いっぱいという状況。2006年8月の一次試験に合格し11月6日に二次試験を終えて最終合格発表があった時は大学受験合格の時よりもその喜びは大きかったように思う。仲間もその年に2人合格し翌年に残りの1人も合格し4人全員があきらめることなく合格して、2人はすぐに土地家屋調査士事務所を開設して独立開業を果たして順調に伸びているようである。


土地調査士になれたことは直接の業務には役に立っているのかと問われると不動産登記業務を行っていないので当然役には立っていない。資格マニアではないのかといわれるかもしれないが、不動産登記簿謄本が読めるようになりたいというきっかけからはじめて法律の面白さや奥深さをほんの少しだが知りえたこと、そして同じ目的に向かって一緒に勉強した仲間が生涯の友なったことは間違いない。

 

 

 

執行役員建装担当  菅原 健二

自然災害、伝染病、食中毒など緊急事態発生時の対策として経営者はお客さまの安全確保や従業員の安否確認などの対策だけでなく、事業を継続させるための備えが必要である。不測の事態はいつまた起こるともしれず、とにかく備えが肝心で、まずはできることから始めてみよう。


東日本大震災発生後、改めて必要性が唱えられているものの1つにBCP(事業継続計画)がある。
経済産業省中小企業庁の中小企業BCP策定運用指針では、BCPとは企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段を取り決めておく計画と示されている。PDCAサイクルと同様、常に改善し、従業員間で共有し、訓練などの準備をして初めて緊急時に役立つものと解説されている。


こうした情報を参考に自社でもBCPを策定してはいかがだろうか。
まずもって、自社の現状の業務内容を把握し、緊急時の対策として、事業資産の損害を最小限にし、事業の継続を可能とするために最低限行わなければならないことを洗い出すことが必要である。次には、自社の現状の業務プロセスに無駄がないかどうかを点検し、適宜、無駄を省くことが重要だ。そのためには、情報を共有する仕組みや指示が行き届く組織作りも必要となってくる。


こうした取り組みを進める中で、誰もが日常業務を見通すことができるようになれば、結果として労務効率の向上を図ることにもつながる。緊急時は社員一人ひとりの協力を得ずして乗り切ることはできないが、個々人がそれぞれの立場で何がしかの判断を迫られた際には、日頃の教育や訓練がなければ適切な判断を下すことは不可能である。だからこそ、非常時にどう行動するのかルールを決めたマニュアルを作成し、全員が閲覧、共有しておくことが必要である。


また、日常的に整備しておくべきものとして宿泊施設の設備が挙げられる。空調、照明、ボイラーなどの設備は、安全確保のため非常時でも正常に作動させなければならない。だが、コスト負担を伴うため定期的なメンテナンスは敬遠されがちであり、まして先々にわたる修繕計画を立てている施設は少ない。
仮に、休業となれば財務的ダメージも甚大である。自ら不測の事態を招かぬよう、まずは設備の状態を認識し、長期修繕計画を作成することが望ましい。

 

 

 

(観光経済新聞2011年9月17日掲載)

企画設計室 下羽 珠代

ある生命保険会社のアンケート調査によると、今年の夏休みはふるさとに帰省する人が例年以上に多かったそうである。帰省の目的は、「親、兄弟に会いたい」ということで、自分たちのアイデンティティーを確認し、絆を深めたいということであろう。目的はこの他に、墓参りをすることや旅行を兼ねてということも挙げられていた。
夏場に入り、各地の宿泊施設も昨年並みかそれ以上にお客さまが戻ってきたという話を聞く機会が多くあった。大変結構なことと喜ぶとともに、利用されたお客さまが次のシーズンもまた来てもらえる手だてを打ったのかが気になるところである。


さて、日本観光協会が40年以上前から継続している国民の観光旅行に関する動向調査「観光の実態と志向」の中に、過去1年間の宿泊旅行で利用した宿泊施設についての質問がある。宿泊施設はホテル、旅館をはじめ、公的施設や会社の寮・保養所、キャンプ場などさまざまな施設が挙げられている。これも40年以上継続している設問で、もちろん利用する施設の中では、旅館、ホテル(ビジネスホテルを含む)が圧倒的に多い。
昭和50(1975)年代の初めは旅館約50%、ホテル約20%の比率で旅館利用者が多かった。今のようにホテル、ビジネスホテルの軒数が多くなかったという時代背景が、この格差の原因の1つである。


現在はホテル利用者が旅館利用者を15Pほど上回って多いが、旅館利用者とホテル利用者の利用率が逆転したのは、平成10(1998年)年の調査時であった。これまでの間、格差は縮まりつつあったが旅館利用者の方が多かったことになる。利用比率が逆転して10年余り経つが、格差は拡大する一方で、こうした面からも旅行者の旅館離れが指摘できる。併せてこの調査が始まって以来、旅館軒数はピーク時で8万3千軒余り(環境衛生関係営業施設数調べ、旧厚生省)あったが、現在は4万軒台であると言われている。


社会、経済環境の大きな進展、海外旅行者の拡大やインターネットの出現、人口の減少、後継者問題などさまざまな要因が考えられるが、なぜこのように旅館軒数や利用者が減ってしまうのか。旅館経営者を始め業界の諸機関や団体は、旅館の体質改善と次世代に向けたビジネスモデルの構築について真剣に取り組まなければならない。
また、個々の旅館では、客室での料理提供、1泊2食での料金建て、旅行代理店を中心とした販売体制など、何十年と続けてきたやり方を再検討する時期に来ていることを認識してほしい。

 

 

 

(観光経済新聞2011年9月10日掲載)

企画設計室 永池 英治

もともと旅館の客室は一般住宅の間取りを基本にして、それを限られた面積の中で圧縮された造りで構成している。主室の和室に付随して床の間、押し入れがあり、窓側には縁側に似せて広縁を設けた。玄関が踏込みとなり、短い廊下に接して水廻りの洗面、便所、浴室がコンパクトに納められている。一昔前には水屋を設けたりしていた客室もあったが、一般住宅にあって旅館の客室にないのは台所ぐらいだろうか。


客室の主室である和室は居間であり食堂でもあり寝室にもなった。まさに和室本来の機能が生かされた万能の居室であった。しかしながら核家族化が進み、各人で個室を持つようになると、万能の居室の存在価値が薄れてしまった。マンションを例にとれば、居間に接して客間として和室を1部屋設ける程度で、それ以外の部屋はフローリングの洋間仕様となっている場合が非常に多くなった。
また、唯一の和室であっても限りある住宅面積では不経済という理由で、床の間を設けていない場合が、ごく普通に見受けられるようになった。たとえ床の間を設けた和室であっても、物置であったりテレビ置き場であったりと本来的な機能は忘れ去られ、無用な場所と言わんばかりの状態となっている。これはまた旅館の客室にもしばしば見られる残念な光景でもある。


4年前にある住宅会社が実施したアンケート調査によると、マイホームに和室が1間は必要とする人が半数近く占めていたのに対し、和室に床の間を必要とする人の割合は2割にも満たなかったという。床の間は格式ばっていて旧来の封建制度の遺物であり、希有な来客のための装飾的なものに1帖分の面積を費やすのは不経済だから不要であるといった意見が従来からまかりとおって存在している。住宅に床の間が消えようとしているのと同様に旅館でも高齢者対応としてベッドルームが増え、和室面積が減少し、それに伴い床の間の存在感がますます希薄となってきている。


本来、床の間は、季節や行事ごとにさまざまな飾り付けをして来客者をもてなす、しつらいの場。趣味のいい水墨画や書を掲げたり、四季折々の花を生けて、日本的美意識を演出したり表現したりする舞台である。
また、その家の格式を示す象徴で、座る位置により上座、下座という決まりごとが存在する権威を示す場所の役割も担っていた。このように考えれば接客の場としてしつらいを表現する床の間は、旅館の客室にはなくてはならない存在であると言える。将来、床の間のある和室は旅館の客室にしか存在しない事態となっているかもしれない。

 

 


(観光経済新聞2011年9月3日掲載)

企画設計室 高橋 慎一郎

電通が提唱する消費者行動のプロセス「AISAS」は施設選択のプロセスにも当てはまり、いまや2つの「S」Search=検索、Share=共有は消費者には欠かせないプロセスと言える。特に、最後の「S」=シェアは、購買した人の体験をシェアして行動するというもので、この象徴がいわゆる「クチコミ」である。
以前は限られたコミュニティに対して有効であったクチコミは、現在はご存知の通りインターネット上において誰でも共有できる情報となっている。このクチコミについて、さまざまな現場から「返信をすることで1日が終わる」「的を外れたお叱りがあって困る」などの声をよく聞く。実際にネット担当者はこのクチコミに悩まされその回答に多くの時間を割いているところも多い。


ただし、現在のクチコミ対策は「このような要望が多い」「このような苦情が多い」などに対する対症療法的なものが多い。そもそも消費者側ではなく提供側からすると、クチコミは「お客さまの声」を聞くツールであると同時に、そのお客さまの声からより支持してもらえる施設になるためのツールだ。それを改善した先に何が待っているのかを見失ってはならない。
前述の通り消費者にとってクチコミは絶対的な情報の1つで無視できないことから、不本意なお叱りや指摘であってもさまざまな対応や改善をしているのが実情であろう。一方で、クチコミ対応に追われているということは、実は、このシェアされている情報と提供する側が用意できる、あるいはしようとしている商品との間にずれが生じているということでもある。


体験をシェアされる→読んだ人がその内容を想像する→共感して期待する→思っていたのと違う、というのがクチコミにおける要望や苦情の大半の原因であろうが、提供する側は何の対処もできないのだろうか。
例えば、シェアされる情報を意識的に狭めて、「料理はどうでしたか」ではなく「刺身の量は多かったか」という聞き方に変えられる。

 

しかし、現在のクチコミにはその手法が採用できない。そこで利用したいのが返信コメントである。
「ところで刺身の量はどこにも負けないつもりですがいかがでしたか」といった限定した投げ返しを繰り返すと、それを見た客は「料理」ではなく「刺身の量」に期待する。他方、提供側も刺身の量には期待してもらいたいという意思を伝えることでシェアされる情報を狭められるためクチコミを味方にしやすくなる。
消費者発の情報が溢れそれが真実とされる昨今、提供側はこの行動プロセスを逆手に取ることも必要である。

 

 

 

 


(観光経済新聞2011年8月27日掲載)

企画設計室 小輪瀬 博子

顧客が客室内でどこに安らぎや旅の楽しさを感じ、どのような滞在時間を求めているかを一般的に論ずることは難しいが、バブル崩壊以降、最近でもリーマンショック、東日本大震災、福島原発事故と極めて強い逆風の中にあって、旅に出る人々の感性はどのような変化を見せているのだろうか。


多くの施設経営者に聞くと、共通傾向として①団体客の大幅な減少②家族連れ客、特に夫婦客の増加③クラブ、居酒屋など二次会施設の利用率低下④アーリーチェックイン、レイトチェックアウトによる客室滞在時間の長時間化⑤中~廉価格帯顧客の施設・サービスに対する要求度合上昇、許容範囲の縮小化⑥予約行動の間際化とネットによる客室詳細情報の提供要求増⑦高齢者に対する施設・サービスの配慮増などが挙げられる。宿泊施設としての客室、大浴場や、食事など空間部分の要求が高度化していることは間違いない。


では、宿泊商品の本質である居心地の良い空間とはどのようなものか。

寝室とリビングルームは快適さを要求される。高質な寝具と共にベッドの利用希望が高齢者を中心に増加。これらのリクエストにこたえると、旅館・ホテルカテゴリーがあいまいになり、旅館版ツインルームの情緒確保も一層の工夫を必要とされる。
AV機能という点で考えれば、今回の地デジ移行で客室のテレビも家庭のテレビに負けず劣らず薄型、大画面、高画質など高グレードとなったが、好みの曲を良い音で楽しめる単純な装備も必要になってきた。旅行客層の高齢化とともに、リラックスできるソファーが必要となり、広縁はリビングルームへと大きく変化している。
高グレード客室に装備されていた前室、副室の機能が改めて問われている。
客室の浴室は、利用率の低さからユニットバスの商品力喪失が明らかで、体を洗う機能からバスタイムそのものを楽しむ浴室へと変化している。露天風呂付客室も当たり前となった。近年、スタイリッシュな国産シャワールームもあり、空間を広く感じさせるガラスウォールのバスルームと併せての活用もあろう。


また、ホテルの中でも人気を集める外資系都市ホテルの40~50平方㍍の客室に対し、旅館で一般的な35~40平方㍍の10畳タイプ和室は手狭さが否めない。この現実は、いずれ旅館客室に大きな影響を与えることになろう。
旅館の和空間の在り方は、日本の伝統、文化を継承、体現しつつも洋空間との絶妙な融合と調和を図ることが今後の客室空間の求める姿と感じている。

 

 

 


(観光経済新聞2011年8月20日掲載)

企画設計室 竹原 和利

冬の省エネ対策といえば熱の有効利用です。熱といって思い浮かぶのは温泉や暖房や光です。日本書紀には木材の使用法が残っているように古くから日本は木を積極的に活用し木の文化を育んできた。その代表例は、現存する世界最古の木造建築「法隆寺」や木造建築最大級の「東大寺大仏殿」などだ。


一方で木造は地震に弱いといわれ、地震の多い日本では心配な一面もある。実際、東日本大震災でも多くの木造家屋が倒壊し津波によって流されてしまった。日本の木造住宅事情について書かれた「3匹の子ぶた」というイギリスの童話を参考にした本がある。原作は3兄弟の子ぶたがそれぞれ建てた「わらの家」「木の家」「レンガの家」のうちオオカミに吹き飛ばされずに無事だったのがレンガの家という話で、地震の少ないイギリスでは風害に備えて家造りをするため、重い建物が被害を受けにくいという教訓だが、地震と台風の多い日本ではレンガの家はつぶれたら圧死してしまい、わらの家は吹き飛ばされてしまうので、日本版3匹の子ぶたは木の家を造るのを賢い選択としている。


では、なぜ木造が地震に弱いと言われるかというと、建築基準法では、2階建て以下かつ延べ床面積500㎡以下の木造住宅は構造計算書の提出が免除されているため、構造計算までして設計している住宅が少ないからである。大地震のたびに構造規定が改定されてきているが、いずれこの特例も見直されることになろう。


さて、このように日本風土にとって木造は最適の構法であって老舗の木造旅館も数多く残っているが、法規制によって3階以上の旅館は木造では原則建てられない。2階建ても2階の床面積が300平方㍍以上となると不可である。結局のところ木造ではほとんど平屋でしか建てられない。また木造は音を通しやすいため、上下階に客室があるとクレームの元になり、必然的に木造平屋の佇まいが理想となってくるが、そのメリットはどのようなものがあるだろうか。


まずは、すべての施設が地面に接しているため自然を身近に感じることができるのが最大の利点だ。さらにエレベーターや階段が不要で営業スペースが効率的に確保できる。また、2階がないことで構造上の制約がなくなり、自由な間取りが可能で、自然と調和した環境に配慮したエコロジーな建物となる。加えて建物の軽量化は、基礎を簡素化することにつながり、鉄筋、鉄骨よりも比較的コストを抑えることができる。


まさに、自然豊かで個性的な間取りを特徴とする宿泊施設にとって、投資額を抑えた形で実現できれば、木造平屋の選択も検討の余地があるのではないだろうか。

 

 

 

(観光経済新聞2011年8月13日掲載)

企画設計室 高橋 慎一郎

冬の対策

暑い夏がやっと終わりを告げ行楽のシーズン秋がやってくる。観光のシーズンだぞと毎年こんな風に
浮かれていられればいいのだが。東日本の宿泊関係の皆さんは、今年は春先から大変でした。
大地震に加えて福島原発の事故を受け風評被害の対策や節電対策にと追われる日々が続き、夏が
終わったら、もう冬の節電、省エネ対策を講じなくてはならない。ほっと一息入れる暇も無い状況です。
でも冬の対策を講じると講じないでは経営に大きな違いがでてきます。

 


冬の省エネ対策といえば熱の有効利用です。熱といって思い浮かぶのは温泉や暖房や光です。
温泉といえば掛け流しとばかりに温泉を湯口から大量に掛け流し廃湯しているところを見かけますが、
温めた熱をただ捨てているなんてことになっていませんか。暖かい温泉が対流し、浴槽の冷めた
お湯が廃湯されるようになっていますか。温度の低い温泉を加温している施設では熱量の損失は
大きな経費の損失でもあります。


露天風呂になると外気温や風の影響を受け、熱のロスはもっと大きくなります。効率的な運用をするためには、
掛け流しと循環の併用をする方法があります。循環保温により捨てる熱量を少なくすることができます。
同様に浴槽の近くにボイラーや循環器を設置することで効率を高めることができます。浴槽と熱機器をつなぐ
循環や保温の配管に距離があると熱のロスが大きくなるからです。露天風呂の場合は、使用しない時間帯に
浴槽に蓋をして風に放射熱を奪われないようにすることも大切です。熱の有効利用を考えるという点で浴場の
システムを見直してみてはいかがですか。温泉が余っているところはもちろんですが、廃湯の多いところ、
熱量があるところは熱交換器やヒートポンプを利用して廃熱の有効利用をすることも考えられます。
設備に掛かるコストが5年以内に回収できるのであれば検討してみる価値はあります。

 


次に暖房ですが、旅館やホテルでは、一般にお客様が使用するときしか使わない場所と常に暖房を必要
とする場所があります。前者は客室、宴会場、会議室などの個室スペースで後者はロビーラウンジ、大浴場、
などのパブリックスペースや厨房、事務所などのバックスペースです。熱量の無駄遣いをしないよう暖房の
系統を使い勝手によって切り分けられる、入り切りができること、システムも分散型や集中型を使い分ける
ことが大切です。お客様が直接使用する客室のような個室スペースは分散型にして使用する部屋ごとに起動
できるようにすることで不要なエネルギーを使わないようにします。


お客の有無(収入の有無)に係わらず基本暖房がいる場所は、効率の良い暖房システムや建築的な保温を
取り入れることが必要です。暖房の熱は上にあがります。どの位置から噴出しているのか人間に暖房が
届いているのか、天井の高い空間では人がいないところを暖めている可能性もあります。発熱体を使った
床暖のような補助の暖房の取り入れた方が効率的なことがあります。建築的には、保温のために床や壁に
断熱材を入れ、視覚的にも有効な暖炉を設置することやサッシの内側にインナーサッシなどを取り付ける
ことで暖房効果をあげることができます。

 


最後に光についてですが、面白いブラインドがあるので紹介をします。ブラインドの機能は通常遮光をするのが
目的ですが、このブラインドは、一部に差し込んでいる光を偏光して室内を明るくすることができるのです。
一部の明るさを全体に広げることで照明の点灯を削減し、かなりの節電になります。事務所などでは削減率80%
という数値もあるようです。和紙のタイプもあるようなので客室やロビーなどにも使えるのではないでしょうか。
熱が逃げないように保温をはかりながらの節電も考えらます。


温泉にしろ、暖房にしろ、光にしろ、効率的なエネルギーの使い方が節電や省エネに繋がります。
冬が来る前にもう一度、身近なエネルギーを無駄にしていないか、熱を捨てていないか点検することで
エコを考えてみませんか。

 

 

東日本営業部建装専任部長 中安敏雄

価値観やライフスタイルの多様化から、独自の旅館のあり方を考えなければ営業を続けることが厳しい。
旅行の目的地となる旅館になれば安定した顧客獲得が可能であろうが、当然、一朝一夕にできることでは
ない。旅行意欲の低下によりマーケットが縮小したため、また、節電対策で企業の就業時間や休業日が
移行し余暇時間が変化し、これまで週末に予約が取れなかった人気の宿ほど平日も稼動を増やしている
ケースもあり、顧客獲得競争は厳しさを増している。


集客増にはリピーター対策と新規顧客の開拓がある。その販促として、誰と、どこから、何を目的として
利用しているのか、その人はいつ、どのように予約しているのか行動パターンの分析が役に立つ。
既存顧客の情報を整理したうえで、ターゲットを設定することが必要である。


旅行に「非日常」を求める人は多いと言われる。非日常は日常の裏返し。日常をとらえることが、
非日常を読み解くてがかりになる。旅館にとっては、ターゲットとする顧客層の日常を把握することで、
その層が期待する非日常を想定した商品づくりができる。
だが、今回の震災での未曾有の事態に多くの人々の日常が大きく変わったと聞く。ターゲットとする顧客層の
日常の変化をいかに適切にキャッチするかが、今後の販促を大きく左右するのではないか。


商品としての旅館を構成する重要な要素に「食」がある。食に対する日常は、この震災でどう変化したの
だろうか。従来のままの対応で十分なのだろうか。その答えを模索するかのように、山形で3軒の旅館を経営
するオーナーが和食のノウハウと地元食材を生かしてプロデュースするカフェ兼定食屋が日本橋馬喰町にある。


有名旅館が知名度のある銀座、赤坂、六本木などの繁華街に料理店を出す例はよく聞くが、最近ショールーム
やデザイン事務所が増えたとはいえ問屋街の印象が濃い町に出店するのだから非常に興味深い。実際に店を
のぞいてみるとわざわざその店を目指しておしゃれな人たちが長蛇の列をつくっているのだから相当な評判だ。
表立った宣伝はなく、どれだけ本業に効果があるのかも不明だが、食に関するアンテナが高い人々の日常に
近づきその変化を敏感にキャッチできることに価値を見出しているようにもとれる。


旅館が地元を離れてお客さまの日常に近づく形で出店する。そこで顧客情報を収集し、それをリピーター対策
にも新規顧客獲得にも活用していく。販促の積極的な取り組みとして注目している。

 

 

 

(観光経済新聞2011年8月6日掲載)

企画設計室 下羽 珠代

旅館における食事場所については、露天風呂付客室の進化に合わせる形で積極的に料理茶屋、
食事処を導入する旅館が多くなっている。これは、お客さまの食事場所に対する考え方の変化による。
特に露天風呂付客室利用のお客さまがホテル的なサービス対応を望むことが増え、チェックイン後に
従業員が客室に入らない、お客さまの都合に合わせるサービス運営を多く取り入れたことによる。


露天風呂付客室のお客さまは、食事場所がそれなりの雰囲気で、個室や間仕切りでプライバシーの
確保がなされていれば、料理茶屋や食事処の食事専用場所に大きな抵抗感はなかったことで
料理茶屋や食事処の導入が一段と進んできた。旅館側は、この料理茶屋、食事処の導入でサービス動線が
向上し、サービス要員の減員が可能となり、労務効率の向上につながった。


また食事場所と厨房との距離が短くなったことにより、料理の選択性の導入が容易となり、温かい料理は温かく、
冷たい料理は冷たくという本来的な提供が比較的容易に実現でき、さらにテーブル上で焼く、炙る、煮るなど
料理のバリエーションが広がり、直火を使って、においや煙を出すといった独立した料理茶屋、食事処ならではの
演出効果も発揮できるなど、料理のメニュー改善と商品力向上につながった。


最近では、料理茶屋、食事処の客席の中心に、調理人が料理を作る場面を見せる演出を取り入れた
オープンキッチンなどを導入する旅館も見られる。
また、料理茶屋、食事処の座席は、当初の個室に畳、座卓の形式に代わって掘りごたつ形式が非常に
多く取り入れられた。畳の個室に低座いすを導入した施設もあったが、最近はお客さまの高齢化や
使い勝手の良さを考慮し、サービスのしやすさからもゆとりあるスペースに大きめのいす・テーブルを
配するレストランスタイルが増えてきた。


また、一部の旅館では露天風呂付客室に複数の部屋を設けて本来の旅館形式の部屋食にする旅館も
出てきており、食事提供も多様化、進化を遂げている。
一方、中・大型旅館では、団体客の減少でコンベンションホールを、個人客に対応するため、料理や素材に
こだわり、オープンキッチンを取り入れたコンセプトブッフェダイニングに転用する施設が多くなっている。


食事の提供場所は、さまざまに変遷しているが、料理茶屋、食事処などを導入する場合、旅館の大切な商品
である料理を、どんなお客さまに、どんな場所で食べてもらうかを旅館のソフトコンセプトとして明快に
設定する必要がある。

 

 

 

(観光経済新聞2011年7月23日掲載)

企画設計室 秋山 光

多くのホテル・旅館では、職種別採用を行っている実態がある。施設内のさまざまな職種を体験して、
適正を理解したうえで配属が決まるということは少ない。
例えば、客室係として採用されると原則的には客室係として仕事を続けることになる。宿泊施設に
就職したというよりは、客室係に就職したと言える。フロント係はフロント、電話対応、売店や
ラウンジも見ることになるが、その業務範囲はある程度限られている。
時には、料理からフロントへというような人事異動もあるようだが、稀有なケースと言える。


巷では失業率が高い状態が続いているが、多くのホテル・旅館では人材確保に苦労していることも現実である。
また同時に東日本大震災や経済低迷による売り上げ減少を補うため、省エネは当然のことで、さらに人件費に
メスを入れている施設も多い。一方で、就業時間短縮の動きは社会的に進展しており、これから労働力が
増えるような状況にはない。


このような状況では、施設内で少ない人材を効率的に稼動させる必要がある。それは、今まで無駄な
時間があったということではなく、今まで以上の効率化を迫られており、より少ない人員でより多くの
作業を行わなければならないということだ。そのためには、1人ひとりが数役をこなすホテル・旅館の
マルチタスク化が必然となってくる。


この時に正対しなければならないのが、お客さまであり、すなわち、この点がお客さま第一主義である。
お客さまの動きに合わせて人員配置をすることで、お客さま満足度が高まり、ひいては効率的な業務の
推進が可能となる。


お客さまが動く時、例えばチェックイン・アウト、夕食時間帯、朝食時間帯などには比較的繁閑の波動が
生じることが多い。その業務波動に応じて、いかに少人数で臨機応変な対応をし、その結果、お客さま満足度が
上がるような人員配置を行うことができるかがポイントとなる。


さらに言えば、その人員配置をコントロールする人材も必要となってくる。コントローラーは全体を見渡しながら、
人を動かさなければならない。このコントローラーの存在は、同時に若手スタッフにとっては、いつまでも同じ
仕事ばかりではないという緊張感ととともに目標感を持ったモチベーションアップにつながる。


基本は、お客さまであり、その満足度の向上にある。そして、また来たいと思わせることでリピーター化し、
さらに顧客化することで施設の維持、向上に多大な成果をもたらすこととなることを忘れてならない。

 

 


(観光経済新聞2011年7月16日掲載)

企画設計室 土屋 武志

長期予報(3カ月)によると今年の夏は関東、甲信以西の地域で、平年並みかやや高く、東北、北海道では
平年並みかやや低い気温であるとの予想である。
大手企業や一部の官公庁では、夏休みの長期化と土・日曜日から平日へ休日変更、冷房温度の高め設定
に加え、早い時間の出勤、退社による涼しい時間帯での活動など従来の慣行をいろいろな調整や工夫により
変更し、電力需要のピークの分散化を図ると共に、暑い夏を乗り切る手立てとする予定のようである。


こうした動きをにらみ旅行会社の店頭には、被災地支援型の旅行商品とともに夏休みの長期滞在型商品や
親子での体験型宿泊商品、連泊型商品の案内が並び始めた。今年の夏は暑い都会から出て、自然の風が
爽やかな山や海や温泉でゆっくり過ごしては、ということであろう。電力の最大需要期である夏の旅行は、
都市部での電力消費を押し下げるし、被災地域への旅行は、復興や景気回復支援といった効果も期待できる。


世情を被うニュースが暗くなりがちの中、自分たちの所得が伸び悩んでいても年に1回くらいは旅行に行きたいし、
まして何らかの社会貢献につながるのであればといった理由に後押しされて、今年のゴールデンウイークは
予想以上の旅行者数であったとのことである(観光庁発表では国内宿泊旅行人数ベースで対前年3・2%減)。
旅行各社は夏の旅行にも、こうした消費者の動きに期待しているのであろう。


さて、最近ある宿泊施設の経営者から、今回の震災、原発事故を契機に宿泊施設の経営環境は大きく変わり、
従来からの経営のやり方では通用しない時代になってしまうとの意見を聞いた。曰く「時代の変化に確実に
対応できない経営ではもたない」。曰く「同じ地域の他施設との違いがはっきりと分からないサービスと運営では
とても続かない」。


今回の震災や原発事故による一時的な旅行マインドの冷え込みや不景気など需要量の縮小があるがゆえに、
どの商品でも売れればいいという総花的でさして工夫のない商品による単純な売上主義はもはや通用しない。
どの商品をどのお客さまにいくらで売ってどれだけの利益を残すかを明確にして、全体での収益を確保できる
綿密な計画・立案と実行が必要であり、当然、その計画は、経営者のビジョン達成に向けたガイドラインを
ベースに作られるものでなければならない。


昨日の延長線上にあった営業や運営で良かった経営から、実践的なノウハウやスキルに裏打ちされた経営に
転換しなければ生き延びてゆけないという厳しい話であると理解している。

 

 


(観光経済新聞2011年7月9日掲載)

企画設計室 永池 英治

露天風呂ブームに火がついたのは80年代と言われるが、露天風呂は顧客にとって希少価値、開放感、
心地よさを提供する存在で、温泉の魅力を新発見あるいは再発見させたのがブームの発端となった。
次に秘境ブームが続き、その流れは90年代半ばに露天風呂付客室の人気とともに宿における不動の
商品となった。一時期この流行が終わるのではないかと懸念されたが、さらに進化を続けてきた。


露天風呂付客室は、その非日常性が宿泊者を魅了し、貸切露天風呂などのプライベート感を満足させる
さまざまな「風呂」となり温浴施設にまで波及した。
背景には、バブルが弾け大型投資が難しい時代に必ずヒットする小規模投資の切り札として広く
認知されたことが大きい。実際、温泉地では多くの旅館が装備するのが当たり前となった。


その流れは、洗面、脱衣、シャワーブースなど多機能をできる限りコンパクトに一体化する技術開発や
浴槽の素材・デザインの多様化、果ては、ユニバーサルデザインまでを付加価値とする空間デザインと
機能の新たな調和とともに宿泊料金に見合う空間づくりという難解な解ともなってきた。


一方で、露天風呂付客室をワンフロア全体に配し、専用玄関を整備した旅館内旅館など大型投資も
出現させた。流行は、和風ベットルーム、リビングの付設、床全体のフローリング、複数の内風呂を
装備した和風スイートや離れ形式の露天風呂付客室など終わりなき競合を続け、「露天風呂があればいい」
の時代から、「この旅館のこの露天風呂付客室に泊まりたい」という顧客の要求や選択を引き出し、
目的型で高満足度評価につなげる商品となった。もはや旅館の標準商品といっても過言ではない。


また、客層を2人客に絞り込んだためインターネットでの集客に最適な商品という側面も見逃せない。
この客層は、既存顧客のスライドではない。新規顧客の開発に結び付いたということが極めて高稼働な
客室の原動力となってきた。


しかしながら、早期に導入した旅館には多少の先駆者利益があったかもしれないが、最近は、今まで
見てきたように投資額が大きく、希少価値も薄れ、供給過多に陥っており、宿泊者に価値が分かりにくく
なっているという宿の悩みを多く聞くこととなった。


作れば売れた時代から顧客に厳しく選別される時代に転換した今、露天風呂付客室が依然、高付加価値な
商品力を維持するために出来ることは何か。顧客ニースを精査して費用対効果を見定めた投資を行う。
すなわち計画段階からの十分な調査と検討が何より重要と考える。

 

 

 

(観光経済新聞2011年7月2日掲載)

企画設計室 秋山 光

リーマンショックに端を発した経済危機のどん底からようやく光明が見え始めた矢先の出来事であった。
今回の東日本大震災が宿泊産業全体に与えるインパクトは想定外の大きさである。交通網の寸断、
自粛ムード、出張中止命令、そこへ原発問題の追い討ちでの風評被害。東北・関東地方だけでなく
甲信越・東海地方までが大幅な集客減になり、しばらくこのような事態が続くのは避けられない気配だ。


一方で、震災前を冷静に見つめてみると、国内旅行動向は旅行者数が減少に転じて久しい。
これは人口減と1人当たり旅行回数の減に起因する。この減少を補うことを期待された外国人旅行者は、
今回の震災で日本観光どころではなくなってしまった。すなわち震災前と震災後でも旅行者総数
(絶対数)を増やすことは非常に難しいと言わざるを得ない状況だ。


総数がダメならリピート客(旅行回数)を増やすしか手はない。固定客を持っている施設やリピート率の
高い施設は、これを機会と捉え顧客管理台帳の見直しを行い、販売促進に打って出るべきである。
「特別キャンペーン」「日頃のご愛顧」「会員組織立ち上げのご案内」「女将だより」といった具合に
何でも良いので、自粛ムード漂う顧客の下へお値打ち感のあるものを送り込むのも方法だ。


そうした状況下、ビジネスホテルや素泊まり・1泊朝食プランのある施設、日帰り施設などは震災後の
顧客の戻りが早かったと聞く。震災復興の工事関係者が宿泊しているケースもあるだろうが、
ここでも震災前の傾向が思い浮かぶ。


温泉場にビジネスホテルが増えて高稼働を維持したり、家族連れがビジネスホテルに宿泊したり観光の
拠点が少しずつビジネスホテルに移ってきていたことは否めない。旅行者からみるとその価格が圧倒的に
魅力である。旅館に1泊する金額で3泊できる。


リピート客を増やすことでは、1泊2食は利用金額が高く何回も利用できないが、素泊りなら気軽に
何回でも利用できる。施設からみてもメリットが大きい。人件費などの固定費を大幅に下げることができ、
食材などの在庫も減らせるし、オペレーションの簡素化もできる。


震災のような不測の事態にも軽装備なことが早期の営業再開につながったのではないか。すべての旅館が
1泊2食の市場で戦う必要はない。0泊2食や日帰り特化の旅館があっても不思議ではない。戦略を変え、
市場をスイッチし、競合の少ないところで差別化を考える。現在の建物を持て余し気味にしている施設が
あれば検討に値しないだろうか。

 

 


(観光経済新聞2011年6月25日掲載)

企画設計室 新島 崇

震災後から約3カ月、資金繰りや改善計画の練り直し、さまざまな助成や補助金の申請や適用に
関する相談など、私にとっても怒涛のような日々が過ぎた。金融機関の対応も多種多様なら担当
している経営者の考え方もさまざまで難解なパズルに挑戦し続けている感覚を持つ。


一方、現場に対しては、震災後一貫して
「この機会だからこそできる見直しをしよう。現場はとにかくやってみることが大事だ」と言い続けている。
お客さんが少ないと今の状況を嘆くだけでは日々が無駄に過ぎていくだけ。時間に余裕のある今、
業務改善の好機だ。現場と一緒に頭をひねり模索している見直しの取り組みの一部を紹介する。


この業界では、常々言われてきた基本的な話が「マルチ化」で、できていないところが多いのが現実だ。
ある施設では技術者が行うべき調理以外は、全員がやれるようになろうということになった。
満足度を下げずにマルチ化を進めるには、現場における業務量全体の可視化を進め、どこをマルチ化
すべきかを明確にすることが重要だ。


マルチ化は、顧客滞在中の仕事量がピークに達する時の従業員数を最少人数化する試みでもある。
小さな施設では意図せずこのマルチ化ができているところも多くあるが、一定の客室規模になると途端に
難しくなる。マルチ化したはずの仕事が現場で誰かの通常の仕事として恒常化するからだ。
顧客サービスは最低限のことをすれば良いという視点で探してみると、少しの訓練で全員ができるように
なる仕事は意外に多くあるものだ。


また、別の現場では、「顧客に対してやること」を少し加えてみようという試みもしている。あれこれやろうと
しても忙しくてついついできなかった顧客満足度アップの取り組みをこの際やってみようということだ。
滞在する顧客が少なければ、対応する従業員も少なくなるので忙しさは変わらないと思う人もいるだろうが、
実際に計算してみると最少運営人員であっても顧客当たり労働時間は、よほどの効率化がされない限り
わずか数分だが増加している。その数分で一体何ができるかというと、いつもより数秒一人ひとりに長く頭を
下げる、あいさつの後に少し話をする、顧客の名前を全部覚えるなど、やれることは結構あるものだ。


わずかな行為ではあるが、コツコツと積み立てることで顧客に良い印象を与えるこの取り組みを「満足度貯金」
と呼んでいる。現場も一度身に付けてしまえば、忙しくなっても忘れず続けられるかもしれないという期待を
込めた作戦である。他にもまだ現場にはたくさんの知恵が眠っている。

 

 

 

(観光経済新聞2011年6月18日掲載)

企画設計室 小輪瀬 博子

災後、これまで縁のあった福島県内のある温泉旅館経営者に状況を聞いたところ、地元で有力な2軒の
旅館が構造的な被害で閉館に追い込まれているという。当社調べでも宮城、福島、岩手を中心として
いまだ多くの施設で営業再開の目途が立たない厳しい状況と聞いている。


先の旅館では、一般客が大幅に減少したため、福島県からの要請もあり、震災避難住民を仮設住宅に
入居できるまで低額(県負担)で受け入れている。また、救援関係者の関連特需も発生しているものの、
今後の先行きは見えない。


今年のゴールデンウイークはネット予約などで満館に近い利用はあったが、売り上げでは通常期の
6割程度で、採算ベースにのせるには料金に見合った原価削減はもとより、人件費の低減、
固定費の削減も課題となる。


人件費の低減では、パート化の推進はじめ要員の効率的な采配のほか、国が休業手当などを助成する
雇用調整助成金を活用することも有効である。
固定費の削減では、当社で取り扱いが増えている節水システムやLEDの設置について、イニシャルコストは
かかるものの即効性の高い手法として推奨したい。


福島県では、原発事故による風評被害が深刻で、地域として対策に取り組みつつあるが、こうした被害対策を
含め、今後、政府や金融機関による災害復興支援策の早期の実施が求められる。
金融面では、そもそも旅館業は震災前でも厳しい経営環境にさらされており、採算をとることが困難な中での
運転資金、施設整備資金の確保は一番の課題と容易に察しがつく。


今後、災後の宿泊施設に対する顧客ニーズはどう変化し、何に商品力を求めるべきだろうか。宿泊目的の
多くは、日常を離れてゆっくり滞在することと思われるが、震災を機にボランティアをはじめ社会貢献への
意識も高まっている。JTBは25年ほど前から観光地の清掃活動を行う社会貢献活動を実施し、毎年多くの方に
参加して頂いており、復興ボランティアなど社会性余暇志向の拡大傾向に注視すべきと考える。


宿泊施設の対応としては、単に義援金を募るものではなく、例えば、館内に復興支援コーナーを設け、
宿泊者が東北の生産者発行の「はがき商品券」を購入して応援メッセージを書き込み送付すると、
生産者から商品が届く、という仕組みを紹介するなど、家族や同行者と共に少しでも復興支援のために
時間消費できる場の提供は、今宿泊者に求められていることではないだろうか。
被災地と宿泊者を結ぶ情報提供を、宿としてできる身近な貢献として検討したい。

 

 

 


(観光経済新聞2011年6月11日掲載)

企画設計室 野口弘之

宿泊施設の魅力要素として大きなウエートを占めるのは、サービス(ホスピタリティ)、食事(会場、メニュー)、
客室(快適性、広さ、環境)、大浴場(規模)、付帯設備(宴会場、食事処、駐車場など)がある。
これらの満足度が高ければ、評価点が高くなり、リピーターが増加し、ひいては売り上げアップへとつながる。


数年前、国内メディア系商品、アジア系インバウンド団体向商品など、固定費はかかるものという
固定観念の下、航空座席と同様に空室で販売機会を逃すよりも、安価でも稼動させた方が良いという
判断が当たり前のように蔓延し、インターネット経由での販売がその傾向に拍車をかけた。
かつての右肩上がりの経済成長期のような市場拡大期ではないため、価格面での過当競争に陥り、
その結果、売り上げが減少してくると、当然のように人件費など内製的な経費削減を迫られることとなった。


売り上げ減少→経費削減→サービス悪化(顧客満足度低下)→利用者減少→売り上げ減少、という
負のスパイラルが必然的に起こる。このスパイラルを打破するため、経費削減とサービス良化(顧客
満足度アップ)、売り上げ増を果たす方策として注目を浴びたものの1つが、食事提供の見直し(部屋食
削減)、ブッフェスタイルの導入だ。旅館の場合、非効率、高コストの温床となっていた客室係による
部屋食からブッフェへの変更は、労務費削減にも一定の効果を発揮した。


しかしながら、定着したブッフェにもほころびが目立ち始めた。典型例が、規模と利用者数のバランス。
狭い会場に長蛇の列、広範な会場にまばらな利用者、長いブッフェラインに控え目な品数など。団体客と
個人客のバランスも考慮しておかなければならない。同時に、満足度の向上とともにコスト削減も常に
意識しなければならない。少し前の業界トレンドであった団体から個人へのシフトも一段落し、宿泊需要
低迷期にこそ新たな発想で取り組むべき課題となっている。


宿泊者の嗜好変化に、いかに適切に対応するか。食事提供スタイルは、顧客満足度アップに直結しているか。
柔軟に見直す経営者の姿勢が、今まさに求められている。現行の会場、メニュー、什器、レイアウト、
インテリア、照明、要員配置などが適切かを検証すべき時期ではないか。


宴会場の食事処化の例として、団体専用オープンキッチン(福井県あわら温泉・まつや千千)、プリフィックス型
オープンキッチン(岐阜県下呂温泉・水明館)、ハーフバイキング(北海道十勝川温泉・観月苑)など先進的な
取り組みに今後も注目し学んでいきたい。

 


(観光経済新聞2011年6月4日掲載)

企画設計室 土屋武志

近年、大きなブームとなった商品に「デザイナーズ旅館」と「露天風呂付客室」がある。
前者は、従来の和風建築、旅館建築のセオリーにとらわれることなく、斬新でスタイリッシュな空間を構成し、
後者は利用率の低いユニットバスの代替機能から脱し、高額商品化の目論みとして一般客室にも装備し、
他館との差別化要素とすることで多くの類似商品を出現させた。


いわゆるデザイナーズ旅館の多くは、単に建築空間が優れた新しいデザインというだけでなく、顧客の使い勝手、
居心地、嗜好、感性までを大切にして構成されていることから、ホテル志向の顧客をも吸収し拡大した。
露天風呂付客室では、わざわざ客室から大浴場、露天風呂へ出かけることなく、いつでも家族や同行者と
優れた眺望を楽しめる非日常の新しいバスタイムを提供し、新たな客層を開拓することにつながった。


しかしながら、こうした商品が普及する中、繁盛旅館や話題旅館のデザインを模倣し、雰囲気、システムを
単純コピーした旅館が多く出現したものの、なかなか人気が続かず、類似商品群の中で埋没する状況に至っている。
スキルの向上にはまず模倣からという論もあるが、やはり本物は強い商品力を保ち続けるということか。
自館の顧客にどのような時間を過ごしてもらうのか、そのために何を提供するのか、経営者の顧客への
思い入れの強さ、意思が、商品力を磨き強くする。


昨今、内外を問わず日常の生活に大きな影響を与える事件、事故、紛争が頻発している。こうした事象は、
我々に強いストレスをもたらし、そこから解放されたい、逃れたいと旅に出る傾向を強めていないだろうか。
こうした顧客ニーズを満たすために旅館が提供する時間には2つのパターンがあると思う。


1つは、静かで受動的な「癒し」の時を過ごすパターン。
軽い緊張感を覚えるほどの佇まい、静謐な空気、心地良い自然の音やBGM、照明など。
もう1つは、能動的に「ストレスから開放」される時を過ごすパターン。
五感で楽しみながら箸を運ぶ夕げや朝げ、同行者と交わすなにげない会話、偶然耳にする土地の話題や見所など。


地産池消の肴と地酒を楽しむバーやラウンジ、高級リゾートと同等のエステやマッサージ、広く、ゆったりとした開放感
溢れる湯船。こうした至極の時間の組み合わせが大切で、その強弱、濃淡の組み合わせの巧みさが「良い旅館」を
構成している。模倣ではその濃淡が平板か極端に偏り、物足りなさや疲れの誘因となっているのではないか。
精神浄化が果たせる旅館作りを目標としたい。

 


(観光経済新聞2011年5月28日掲載)

企画設計室 竹原和利

装置産業である旅館やホテルにとって、エネルギーにかかわる問題の影響は大きい。
計画停電をきっかけに首都圏の灯りがだいぶ減った。始めは暗いという印象を受けたが、
すぐに慣れてくるもので、海外はこんなものだったなと改めて日本のまちの明るさを知った。


思い返せば、ネオンや自動販売機だけでなく、店舗や駅に電気がついていることが営業中の
合図であったことに気付かされた。室内照明や看板そのもののオン・オフ(灯りの量)でなくとも、
例えば、自社の特徴を表す個性的なサインをきちんと照らせば、営業中であることが分かり、
開閉合図としての情報は伝わる。コンビニなどの明るさが犯罪の抑止力となることもあるようだが、
十分すぎる照度で室内を均等に明るくする必要もなくなり、消費電力は抑えられる。


機能と装飾をうまく使い分けることで、省エネだけでなく自社イメージの伝達につなげることもできる。
サインの検討はとかく後回しにされがちな事項であるが、スタッフに代わりお客さまを誘導する大事な
ツールであり、建物意匠の骨格であるという見方をすれば、時代と共に段階的に変わる館内を、サインの
デザインをいつもそろえることで違和感は薄まり、最小の費用で館内に統一感が生まれるのではなかろうか。


屋外照明では、部屋の灯りを数えて周辺施設の入り込み状況を確認することはよくあるが、それを逆手に
とってベランダや外壁側を照らすと、利用状況は分かりにくくなると同時に、照明デザインされている
建物は大きな広告搭となり、街に表情を与える。灯りの使い方1つで夜の表情は大きく様変わりする。


1軒のスター旅館が街を牽引するケースもあれば、おのおのは小規模でも面的に整備して観光客を呼ぶ
地域もある。人との絆を強く意識するようになった今、自分は何とつながっているのか、
どこへとつながるべきかを見直すと、初めの一歩が踏み出せるのではなかろうか。


既に取り組みが進んでいる分野であるが、LEDは急速な普及が報道されている。消費電力の抑制、
在庫管理や器具交換の手間を軽減することによる間接コスト減と同時に環境的メリットも大きい。

 

旅館、ホテルは衣食住が整っており、今回もそうであるように災害時には公共的な役割が強いことを
改めて証明した。安全対策の担い手としての必要性もさらに増すことだろうが、明るさにおいては、
「暗さが必要な場所」と「明るさが必要な場所」を機能的に整理した照明計画が重要となる。
省エネとストレスフリーな空間の調和がいま求められている。

 

 

(観光経済新聞2011年5月21日掲載)

企画設計室 下羽珠代

東日本大震災により被災された皆さま、大震災と福島原発事故により
多大な影響を受けられている皆さまに心よりお見舞い申し上げます。


JTBの予測では、今年のゴールデンウイーク(GW)の旅行者数(1泊以上)は
国内旅行で前年比約28%ダウン、海外旅行では約17%ダウンとの新聞発表があった。
国内旅行では、九州や関西方面での予約数が伸びつつあるとの記事も併せて書かれていた。


全国を挙げての自粛ムードも、国民が平常時に戻って元気を取り戻さないことには
被災者や地方も元気になれないとの気運の中、いくぶん活動が活発化しているように見受けられる。
また、電力需要抑制のために打ち出された計画停電も当面の間は延期される方針が出され、計画停電の
指定エリアに入っていた宿泊施設はとりあえずの足枷が一時期取り外されたといったところだろうか。


しかし、トンネルの向こうにわずかな明かりも見えずに、大いなる不安と焦燥感を抱えて過ごしている
被災者はもとより、宿泊施設でも、キャンセルの連絡が続く中で宿泊客がまばらにしか戻ってこない状況では、
経営者が抱える不安や悩みは同じように深く、重たいものであろうことは容易に察しがつく。


特に、直接的な被害を免れた東北地方や関東地方の旅館・ホテルの経営者の皆さまにとっては、
心配されたGWが間際でいくぶん盛り返したとの報道があったものの、消費者の旅行する気持ち、
癒しに出かける心持をどうやって本格的に喚起させるか、その手がかりもつかめずに焦り、苛立ち、
不安感の中で日々過ごされていることと案じている。


政府や金融機関による災害復興支援の政策や支援策、あるいは業界団体による支援、救済要請などが、
矢継ぎ早にいろいろと打ち出されつつあるが、こうした支援策に対してアンテナを高く掲げて自館で
利用できるものは逃さずに利用していくことは非常に大事なことだ。


それともう1つ、経営者が今後も宿泊施設を続けていくためにやらなくてはならないこと、
それはこれまで利用してもらったお客さまに対してメッセージを発信することだ。


「自館は元気に営業しています。こうした時期だから、ぜひあなたに来てもらって明日への英気を
養ってもらいたい。あなたのお気に入りの谷空木の蕾もほころび出しました......」などお客さまの顔を
思い浮かべて、お客さまとともに希望を持って歩み出すのだといったメッセージを送ってほしい。


そのときには、来館時にどうやって喜んでいただくかを、真心をこめて思いを巡らせつつ。

 

(観光経済新聞2011年5月14日掲載)

企画設計室 永池英治

 

先人の知恵に学ぶ

7月になり節電が本格的に始動され涼をとる対策を試行錯誤していると、
「家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬は、いかなる所にも住まる。
暑き此(ころ)、わろき住居は、堪へがたき事なり...」と言う徒然草の一節が改めて思い浮かびます。
先人は600年も前から冷房や扇風機の無い夏を涼感をもって過ごす方法を培ってきました。
今回の節電の夏をきっかけに、忘れ去っていた先人の知恵をもう一度思い起こしてみたいと思います。


盆地で夏の厳しい京都の町屋は現在でも伝統的な佇まいが残る都市型住宅です。
間口が狭く奥行きのある独特の間取りに涼をとる工夫が随所に活かされています。
夏の風物詩祇園祭、町屋の住人たちはこの祭りの前に夏支度という家の衣替えを行います。
障子や襖を簾戸(すど)に替え軒には簾(すだれ)を下げて、薄暗く静寂な空間により
皮膚が敏感になったところに、打ち水した中庭を通った涼しい微風をより感じさせる演出を施します。
そして畳の上に網代(あじろ)や籐筵(とむしろ)を敷き、ひんやりした敷物の感触を味わいながら
ゆっくりとした夏の時間が過ぎていきます。
こうした家の密集した町屋には風の通りを第一に捉え、その通風と採光のために中庭を配置します。
そして通風を引き出す道具として「引き戸」の効用が利いてきます。

 

 

 takahashi0711.jpg  

      簾戸(すど)


 

 ドア(開き戸)と違い引き戸はアジアの家屋に見られる建具形式ですが、特に日本独自といって良いほど
日本の家屋の大きな特徴となっています。それは夏の開放性と深い関係があった為発達しました。
従来日本家屋はひとつの空間を引き戸で区切っていくつもの個室をつくりました。
開けると一体化した空間、さらに外してしまうと大空間に様変わりします。
また外部に面した引き戸を開けば庭と連続した空間になり外気を充分取り入れることができるようになります。
このように引き戸が採用され発達したのは夏の通風を確保するための格好の装置だったのです。


また日本家屋のもうひとつの特徴は安定感のあるしっかりした大きな屋根です。
引き戸による開放空間を深い軒を持つしっかりした屋根が支えるといった形式が
従来の日本家屋のベースとなっています。そしてその深い軒の下には縁側があります。
故郷の家の代名詞のようなこの縁側ですが昼間は家族の団欒の場として、
玄関よりも気安く近所の人が寄れるのが縁側でそこは接客の場としても活用します。
細長い板の間で軒の日影のもと外気に面しているため夏は涼しいリビングのような空間でした。


戦後日本の家は冬の寒さを凌ごうと高気密・高断熱の性能を向上させ、
プライバシーを確保するために個室を廊下でつなぐスタイルに変化しました。
それまでの民家には廊下は無く、縁側を経由して襖や障子で仕切られた部屋に入っていったものです。
断熱性が良く個室化した結果、風が通らないつくりとなってしまいました。
つまり自然の空調を生かせず機械による空調に頼るつくりとなってしまったわけです。


話は冒頭へ戻りますが、自然を生かすという先人の知恵を現代建築に取り入れるため
間取りをもう一度見直すことからはじめたらいかがでしょうか。
引き戸の効用を利用して間仕切壁を取り払い大きな空間を引き戸で区切る。
夏の風通しを良くすると共に、家族のオープンな関係にも一役買ってくれることとなるでしょう。


企画設計室 高橋 慎一郎

生きた証

5月のGWに岩手に帰省してきました。テレビや新聞で見て、ある程度理解して行ったつもりでしたが、
実際に目の当たりにした故郷の変わり様に呆然としました。
幼い頃から見慣れた町並みが消滅していました。
たくさんの人達の「生きた証」が消えてしまっていました。


今回の帰省は高台にあって無事だった実家を、家を流された親戚一家に貸すための帰省でした。
漁業をしている親戚で家と共に船も流されてしまっていましたが、家族6人が全員無事だったこともあり、
すごく明るくて逆に元気づけられて帰ってきました。


私達の仕事は、主に宿泊施設のそこに宿泊に来られるお客様の「憩い&癒しの場所」、
「思い出の場所」を、そこで勤務されている方々の「働く場所」をつくる仕事です。
そのひとつひとつの場所がお客様のそしてそこで勤務されている方々の「生きた証」になっていきます。

そして私達の「生きた証」でもあります。
形で残るその場所と共にそこで出会った全ての人達を含めて「生きた証」です。
これからも心を込めて「生きた証」をつくっていきたいと思います。 

 

磯崎の生きた証 isozaki.pdf

 

 

JTB商事 東日本営業部
建装専任部長  磯崎昌志

見えて見えない

弊社は4月より新年度となりました。
ばたばたの年度末の業務を終えて、少しだけ余裕が出来た所です。
暇に任せてではないですが、以前から気になっていた素材をnetで検索した所・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

sasagawa.jpg

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

変な物が出てきました。検索のキーワードは、「瞬間曇りガラス」「六甲ライナー」「目隠し」「風呂」etc

だったと思います。
探そうと思ったのは、神戸の新交通システム六甲ライナーの窓が、一定の場所に来ると一瞬にして曇って、
周囲の民家のプライバシーを保つガラスでした。


昨年の夏から、ある旅館様の大浴場の改修を計画中なのですが、前面は素晴しい庭園があり入浴しながら
庭を見る事が出来ます。ただ、ある一定の場所から、無理に身体を出して隣を覗くと・・・・・・・
「ちょっと見えるかな!」って位ですが女子浴場が見えてしまいます。
通常は、湯気もあり大丈夫なのですが、その旅館様は修学旅行も多数取られているので
問題が複雑になりました。
私は経験が無いですが、男子中学生・高校生の異性に対する興味は通常では考えられない
行動を取る様ですね。


社長より、通常の営業では庭が見えて、修学旅行生が泊まるときは見えなくする方法を提案するようにとの
リクエストがありました。
最初に考えたのは、浴室の間に塀を建てる単純なプランでしたが、即座に否決されてしまいました。
次は、お風呂用のブラインドを提案しましたが、最初のプランよりも駄目とのお叱りを頂戴してしまいました。
塀を建てたら、庭が見え難くなる。ブライドは、1ヶ月で壊されてしまう。仰る通りです。


昔の中国人が、矛と盾とで悩んだ様に、私も見えて見えないで三日程悩んでいた所、電車中で遠足か
社会見学帰りの小学生が「窓が曇って」「見えなくなった!」等の会話をしていました。
素知らぬ顔で聞いていると、神戸からの帰りの様です。
やっと思い出す事が出来ました、神戸は住吉から六甲アイランドに行く六甲ライナー(モノレールの様なものです)に使われている瞬間曇りガラスを使え良いのでは!!


商品は簡単に見つかりました、日本板硝子の製品で商品名はUMUでした。調光フィルムを挟んだ合わせガラスで、電源の入り切りで透明、不透明が一瞬で切り替えが可能です。社長に提案を行い、OKを頂戴しました。現在、浴場に適合するか?防水は如何するか?等を検証中です。
今夏には施工の予定です、竣工したら結果を報告させて頂きます。
http://umu.jp


宿泊施設、特に修学旅行が泊まる旅館様の設備は、一般では考えられない様な事まで要求されます。
何十年か前の自分を思い出して、その時の私が悔しがる様な設備を今後も考えていきたいと思います。


ところで、最初の写真は何だと思います?

正解は「トイレ」です。?との事ですが、トイレは不通見えないように造るものですよね。何方か、ジュネーブに行って使用感をレポートして欲しいものです。


西日本営業部・建装担当 笹川

ここ連日ニュースで伝えている通り、ニュージーランド南部で発生した大地震で多くの建物が倒壊し

多数の重軽傷者や行方不明者が出ているのを皆様も御承知の通りであると思います。
 

我が日本も有数の地震国であり、建築に携わっている者として建物の安全性の重要さを

改めて痛感いたしました。 

最近の大地震(震度6強以上)を忘れがちですが以下に列記してみました。


1995年の阪神・淡路大震災 震度7

2000年の鳥取県西部地震 震度6強
2003年の宮城県北部地震 震度6強
2004年の中越地震    震度7

2007年の能登半島地震と中越沖地震  震度6強(この年は2回も発生している)
2008年の岩手・宮城内陸地震  震度6強


などがあり震度6弱まで入れると2000年以降ほぼ毎年発生している状況です。

死傷者も発生していますが、その多くが一般住宅の倒壊や落下物によるものと

火災での被災であると思われます。
 

阪神・淡路大震災を除き、不特定多数が出入する特殊建築物(学校・病院・百貨店・劇場・共同住宅など多くの

商業施設で旅館ホテルはこの分類になる)の倒壊は記憶にありません。

一般的に特殊建築物の建物の設計基準は住宅等に比べ厳しく、安全性の高い建物となっています。
どの様な基準や法律で旅館ホテルが建てられているのか以下で説明しましょう。 


まず建物は建築基準法及び同施行令により建物の構造や避難基準・防火基準・排煙基準・非常照明基準・

採光・換気基準・シックハウス基準等など多数の基準を設けて安全性を確保しています。

特に構造の基準は世界1であり、今回のニュージーランド地震で問題になっている建物の偏芯率(建物自体の重心と建物の強さの剛芯とのズレの割合)を0.15以下に抑えるように規定しています。

一般的に偏芯率が大きいと建物にねじれが生じ、揺れも大きくなります。

 

また、消防法及び同施行令により消防関係の安全基準がこと細かに規定され、よく目に付く屋内消火栓や

消火器、各種感知器、警報機、スプリンクラー、誘導灯、非難器具等これまた非常に多くの安全基準で

建物を覆っています。


そのほか環境関係は都市計画法や国土法、宅造法、各種公園法などの規制をうけ、所轄保健所長の

許可も受けなければなりません。

 

また、特殊建築物の建築及び建築設備については安全性に不備がないかを調査をして監督官庁に報告する義務もあります。(建物の規模や都道府県により対象建物が若干変わります)
これは特殊建築物(設備)等定期調査報告と言い、定期的(毎年若しくは2年に1回)に調査を行い

不備があればいつまでに是正するかを報告しなければなりません。
調査項目は大まかに以下の通りとなります。


1)敷地の状況(崖や擁壁の状況 地盤沈下が無いか等) 
2)一般構造の状況(採光に有効な開口部、換気設備の状況など) 
3)構造強度の状況(基礎・土台・柱・梁・外壁・塀・工作物等の欠損、劣化など)
4)耐火構造等の状況(外壁・屋根・開口部等の耐火防火性能や防火区画・防火戸等など)
5)避難設備等の状況(避難通路・避難器具・非常口・排煙・非常照明など)
6)建築設備の状況

   (換気設備・排煙設備の風量測定、非常照明の照度測定、給排水設備機器や配管の状況)

 

他に消防設備定期点検及び防火対象物定期点検などもあります。

対象建築物は建物の規模と都道府県により多少の違いはありますが、非常時に迅速な消火活動と

お客様を安全な場所に如何に早く避難誘導するかをハード・ソフト両面で確認点検し所轄消防署長へ

報告する事を義務付けています。(点検報告は年に1回以上 )

 

このように多くの基準を満たし、安全確保のための定期点検を各施設とも行っており、

常に不測の事態に備えています。

 

それゆえ観光旅行やビジネスで旅館やホテルに宿泊滞在されるお客様、どうぞ安心して滞在なさってください。旅館ホテルは安全な場所です。

 

 

建装部 栗原

もう一つの考え方

以前客室の増改築でお手伝いをさせていただいた旅館のオーナーさんから、今年団体客の料理のグレードアップを図るため、宴会場にオープンキッチンを作りたいとの相談を受けた。当初はただのショウルーム的に造るものと半信半疑であったが、厨房の一部分として作りたいとの要望であり、オープンキッチンのデザインと、そこで提供する料理についてのコンサルティングを受注し、フードコーディネーター及びデザイナーと一緒に業務を実施した。


2009年度のJ社送客実績で宿泊客の形態別シェアをみると、個人客71%、一般団体客19%、学生団体客10%と、ご存知のように一般団体客及び学生団体は全体的に減少傾向にあり、依然個人客のシェアが伸長している。
このような傾向において目線が個人客に集中する中、シェアは低いものの全体の20%弱を占め、J社送客人員で400万人前後の固定客層である団体客に目を向けることには、なかなか気づかない。


料理においてもどうしても個人客に目が向き、食事場所も、個人の場合は部屋食又は食事処で提供し、個人客対応の食事処にオープンキッチンを導入するという旅館は多くなってきているが、今回のように、全体的にシェアの低下が叫ばれている一般団体の食事に目をつけ、しかも宴会場ロビーに一般団体専用のオープンキッチンを新設するという考え方はなかなか出てこない。
これは、一般団体の数が減り、大型旅館ではシビアな過当競争が行われている中、経営者が現場でお客様の動き・対応など日々の動向を見ているからこそ生まれた新しい発想といえる。
現在は、オープンキッチンで夕食・朝食を作るだけでなく、宴会場での調理人の料理の取り分け等のパフォーマンスを実施しており、可なり好評とのことである。

 

団体客料理は、個人客料理と違って差別化が難しい。団体の食事処へのオープンキッチンの導入は、それ自体で差別化が図られるとともに、お客様が宴会場に入場する前にオープンキッチンを覗くことによる期待感の醸成等が望める非常に面白い試みであり、この一般団体客獲得を狙った投資によって、実際に新たな客層を掘り起こし、またリピートを促す大きな商品力となっている。

 

経営者が、流行に流されることなく地道にお客様と接触し、観察していた結果生まれたアイデアであり、大型旅館では一考に価する商品と確信している。

 

企画設計室 秋山

 

akiyama_2.JPG

(オープンキッチン)

 

朝食バイキング

団体旅行が主流であった昭和時代には、旅館の朝食は前夜の宴会場であったところに宴会と同様にお膳を並べて、焼魚と煮物、サラダ(生野菜)、ご飯、漬物、味噌汁が基本でした。一度に大勢の朝食客に対応するためには当然のことでした。お客様も何の不満もなく、半ば冷えてしまったお膳に手を伸ばし、場合によっては、迎え酒よろしくビールや日本酒を追加注文したものです。

 

昭和の経済成長とともに歩んで来た国内団体旅行は、経済の成熟化とともに旅行の成熟化を迎える中で、その主勢力は個人グループにシフトすることとなりました。それでも、宴会場でのお膳型朝食は、施設側の都合を反映して継続し、お客様のニーズは明らかにクレームに直結し、このスタイルはNGとなりました。

 

平成時代に入ると、夕食提供と同様に、温かいものは温かく、冷たいものは冷たく、お客様の食べる都合で提供することにニーズが代わり、それに対応することで、お客様満足度が上がることになりました。

 

その結果、朝食ニーズに応える手法として、また一方でヒューマンコストの低減という要求と相俟って、ブフェスタイルに変更する施設が急増します。でき立てのものを好きなだけ自らチョイスできる、理想的とも言えるスタイルです。

 

しかしながら、お客様のニーズ(要求)はエスカレートし、より良いものを求めるが、反対に施設側はより簡素化を図るための手法を求めることとなります。

 

最近では、50室規模を超える施設では、ほとんどが朝食バイキングを行っています。しかしながら、宿泊アンケート評価の全体的傾向として、夕食 > 朝食という施設が多く、朝食評価の向上が待たれる状況にあります。そもそも、旅館サービスにおける朝食の位置付けは、客室、大浴場、サービス全般、食事(夕食)に次ぐ項目として付録のようなポジショニングにあります。ただ、それだけに他館との差別化、区別化の要素として取り組み易く、効果期待度も高いと言うこともできるのではないでしょうか。

 

料理メニュー、会場の演出、レイアウト、什器・食器類の整備、オペレーションなど検討課題も多々あります。問題点を明らかにし、問題意識を共有化することからはじめてみましょう。朝食バイキングを見直し、他館との差別化を!!

 

 

企画設計室 土屋

 

 

上海

特注家具を中国生産している関係で、上海に出張することがあります。

この街は、活気があり、今の日本とは比べ物にならない位成長の勢いを感じさせてくれます。

そんな上海についての感想を述べてみます。


上海に初めて行ったのは、2007年12月、会社の研修でした。

その時の印象は、「なんて汚い街なんだろう」というものでした。

空港を降りると埃っぽく、晴れているのに空は灰色、

街路は汚泥とか食べ物かすとかが氾濫し、とにかく汚いのです。

水道水は、どぶ臭くやや緑黄色っぽい色(当然飲めません)、

水の出もあまりよくなく、トイレは流れにくいといった水設備にも難有でした。

車は譲り合いは一切なし、

店でもサービスという言葉が当てはまるような事がない(レストランでの配膳が「食え」というような態度とか)、

自分がよければいいという自己中心の人たちの集まり、こんなところ2度と来たくないというのが感想でした。

 


それから、何度か訪問していますが、今は「活力のある魅力的な街」に思えます。

ハードの部分は見違えるように変化しました。

まず、空気が少しきれいになった事、晴れた日には青空を見ることができます。

また、至る所で再開発工事が行われ、雑多な街が近代的に建替えられています(写真参照)

但し、水事情とサービス精神は相変わらずですが・・・。

 

matsumura.jpg

 

あれだけ再開発が進められるのも国家権力の強さゆえなのかも知れませんが、

それはそれでスピード感をもって実行する意味では、今の時代には「あり」なような気もします。

再開発があれば、われわれ建装ビジネスもあり(当社は中国展開していませんが)、

インテリアデザインも必要になるということで、世界中のデザイナーが上海(中国)に進出しています。

日本の雑誌・専門誌をみても面白いデザインの施設(ホテル・商業施設問わず)は、上海に結構あります

そんな街ゆえ、魅力的な街に感じています。
少しバブルっぽいところがありますが、時代の先端を走っている街、それが今の上海ではないかと思います。


建装部 松村

コストパフォーマンス

2011年春のリニューアルオープンを目指し、目下ああでもない、こうでもないと、

皆で知恵を寄せ合いプランを進めさせていただいているホテルがあります。

 

1年ほど前に初めて訪れた当施設は、1983年の建築物であり、塩害の影響もある立地柄、

経年劣化も目立ち始めていました。
オーナーとのやり取りを繰り返すうちに、あれもやりたい、ここも手を付けたいと、

どんどん話が膨らんで行くのでした。
しかし、当然ながら投資出来る予算には、限界があるのです。
打合せで出張訪問する度に、前回宿泊させていただいた部屋とは別の客室をわざわざ利用させていただき、
空調がうるさいだの、シャワーの水圧が弱いだの、照明が暗いだの、ガンガン指摘をさせていただきました。
(あの時は、言い過ぎてスミマセン。正直者なんです。)

 

ようやく工事実施詳細もまとまりつつあります。
当初、レストラン部分、宴会場部分等々についての改修意向もありましたが、
今回の計画においては、老朽化した設備の更新工事と客室の改修工事を最優先ミッションとします。

 

昨今、特に感じるリニューアルに対する傾向は、奇抜な意匠ではなく、機能性を重視したもの。
例えば、デザインに凝った壁面や天井の造作よりも、ほこりが溜まらず、掃除がしやすいおさめであったり、
微妙な手触りとか色合いよりも、破れにくい汚れにくい仕上材であったり。
よって、施設のコンセプトしかり、そのリニューアルが意図するもの、
そしてコストを正確に把握して実行することが、プランナーにとってさらに重要になって行くことでしょう。

 

湯水のように投資が可能な施設は存在しないに等しい時代、いかに投資したコストで効果を生み出せるのか。
我々は、日々、ハイパフォーマンスを創出し、クライアントにそして利用者に喜んでいただける、そんな建装曲技団を目指すのでありました。


 

建装部 鳥巣

 


 

露天風呂付客室の次は何が売れるんですか?

と、ひと月程前に当社の若手営業マンから尋ねられたことがあります。その時は思いつくままに「これからはリビング付きが注目されるのでは」と答えましたが、改めて書き留めると次のようになります。

 

一般的に客室の果たす機能としては、就寝機能、リビング機能、ダイニング機能(部屋食の場合)、入浴機能等があります。露天風呂付き客室はこの入浴機能が特化したタイプになるのでしょう。これらの機能は独立スペースを取ると果てしなく過大客室となり、料金設定も自ずと高額になってしまいます。リーズナブルな料金設定が前提では、いかにそれぞれの機能を共有できるかが鍵となります。

 

かつては和室の主室一部屋で就寝、リビング、ダイニングの3機能を果たすケースが主流で、客室係さんが部屋清掃、料理出しから布団敷きまで行う重労働がそのバックボーンを構成していました。部屋食(ダイニング機能)は他のお客様を気にせずゆっくり食事ができて良いという反面、朝ゆっくり寝ていられない、朝布団上げ後で客室のほこりが落ち着いていないことに加え、客室係さんの労働力不足、料理温度管理の問題もあり、最近ではこのダイニング機能は食事処に移行しているケースが増えているようです。

 

では、リビング機能ですが、これまでの標準的な客室は主室中央の座卓と座椅子がその機能を果たし、広縁の3点イステーブルセットが補完していました。日常生活においては、和室が少なくなり寛ぐ空間としてはリビングのソファやダイニングのテーブルイスが定着してきています。非日常空間である旅館の客室では、一時的には座卓・座椅子に座っても、ゆっくりできるのはやはりソファやイスなのです。

 

そこで、これからはリビング機能の特化が進んでいくのではないでしょうか。和室+リビングの形態です。ここでの和室は就寝機能でツインベッドスペースに置き換えることもできます。このリビングはかつて広縁に設定していた小作りの3点セットではなく、ゆとりのある洋室空間の中央にどっしりしたソファを設定し、AV機器や充実したドリンクコーナーの設定、さらにはテラスに眺望の良い景観があれば理想的となります。

 

さて、もう一つの新タイプ客室として、河口湖のKホテルで計画した座洋室があります。これは通常の和洋室の和室を洋風仕様の座敷としたもので、ツインベッドと同一空間において意匠面でマッチし、また、床の間がなく座卓は円形で上座も下座もない寛げる空間となっています(月刊ホテル旅館2010年11月号に詳述)。高齢者に腰掛け易いと人気のあるベッドの良さが見直される中、この座洋室もこれから増えてくるのではと期待を寄せています。

 

 

noguchi2_2.jpg

リビング付客室の事例

 

noguchi3_2.jpg

Kホテルの座洋室

 

企画設計室 野口

ご飯のお供が売れているらしいこの頃ですが、旅館さんのネットクチコミを見て愕然とすることがありました。

「ひとつずつおかずを持ってこられて、ご飯のときにはおかずがなくて食べられない。あり得ない」というかなりご立腹な様子。

 

ひとつずつおかず??

たぶん懐石料理を出されていると推測しますが、お料理をひとつずついただき、季節を感じる的な風流なマナーっていうのはどこかに消え去り、「あり得ない」とまで言い切られてしまうようになってしまったんでしょうか。

 

よくメインがないという話も書かれていますが、それも昔高い高い料亭に上司に連れていっていただいた時に、コース全体がメインといえばメイン。それで季節を感じるんだよ、と教えていただいたような気が。

 

一回で机の上にこれでもかと置いて、「わーテレビで見る旅館の料理だ」というのも楽しい。

ご飯もデザートまで一緒に出しちゃうところだって、それでお客様が喜んでくれるなら、それでもいい。

でも・・・・

 

「それは知っているけど、ご飯と一緒に食べたい」という話と「ご飯がおかずの後から出るなんてあり得ない」という話には大きな川が流れていると思います。

 

せっかく努力しているのにお客様に「これが本当です」と言えない施設側のつらさやひとつずつ丁寧に作った料理人やおいしく食べてもらおうと何度も往復する接待の人を思うと、「おかずじゃないです、料理です!」と横から勝手にクチコミ返信したくなった出来事でした。

 

 

企画設計室 小輪瀬

海外家具

仕事のため9月にタイと11月にバリ島へ行く機会がありました。
もともと海外旅行は好きで、年3回を目標に出かけています。
現実逃避を通してリフレッシュと、仕事を含めた見聞を広げるのが目的です。

 


タイへ行ったのは、納入する家具の工場出荷前の製品検査のためです。
タイのチョンブリという町にあるPodium社の工場でした。
とても大規模な工場で、原木から製品まで一貫して製作することができます。

 

タイの人柄なのか、非常にまじめで繊細。
こちらの要望や変更指示に対し、すぐに納得の行くまで作り直してくれました。
現地に沢山あるラバーウッドやビーチ材が中心で、
同工場では、ニトリやカッシーナIXC、フランスベッドなどの製品も多く作っていました。


価格については、中国でも上海に比べると安く、大連などに比べると若干高いかもしれませんが、
品質に関してはタイの方が格段に良いということです。
ちなみに、現地の人の平均月収は2万円程度ということ。

 

tanase2.JPG 

 

バリ島へ行ったのは、旅館のオーナーのバリでの家具の視察に、
インテリア面でのアドバイザーとして同行しました。
クタからスミニャック、クロボカン辺りのショップを中心に2日間見て廻りました。


数年前に日本でもアジアンテイストが流行しておりましたが、その流行もすっかり終わったように思っており、
正直いっていまどきバリも時代遅れだなと思っていました。
私自身も4年ぶりくらいのバリ島でしたが、時代とともに変わってきており、
アジアンテイストばかりでなく、スタイリッシュなテイストの家具やランプ、石製品などが多くなっていました。

 

話を聞きますと、バリ島もイタリアやフランスなどから多くのデザイナーが訪れており、
デザインの仕事からショップ展開も急増し、スタイリッシュなテイストのインテリアに変化しているということです。
勿論、チークやモンキーポッド、ライムストーン、サンドストーン、ラタン、アタなどの材料も豊富なため、
デザイナーもそれを目指してバリで商売を始めるそうです。


製作に関わる人件費はとても安く、ショップの店頭価格を見ても格安でした。
しかしながら、バリ島も年々物価が上がっており、海運もジャワ島に運んだ後、
スラバヤにあるインターナショナルポートから輸出しなければならないそうです。
そのため、バリ島で気に入った商品をジャワ島で製作し、
そのままスラバヤのインターナショナルポートから運ぶのが一番安いということでした。
ちなみに、現地の人の平均月収は2万円程度ということ。

 


10数年前にも上海の家具工場を視察したことがありましたが、
アジアの国々の発展と工場の品質は格段に上がっているように思います。
私の想像以上に各国、各社がタイやバリ島、ベトナムなどで製作の展開をしており、
海外生産がもう「特別」ではないように思います。
各々の良さを理解した上で、特長を生かすような使い方を仕事に生かしていきたいと思います。

 

tanase.JPG

 

建装部 棚瀬

ふゆ―じたく

10月末札幌に初雪が降り、いよいよ本格的に冬将軍が到来します。
これからは雪と寒さに向けた寒冷地対応になり、車のタイヤを冬用に交換し、

庭木の囲い、除雪用具、冬用の靴、防寒着など準備にはいります。


私の感覚も、一昨年10年振りに札幌に戻り少し寒冷地仕様に戻りつつありますが、

加齢分、環境変化への順応は遅れ気味で改めてリセットが必要です。


一般に建物・住居も必然に機密性(断熱、二重サッシ、ペアガラス)は高く、

外は氷点下でも建物の中は20℃以上あるため、必ず上着を脱ぐのでコートの下は薄着が一般的。
私も東京に住んでいる時はセーターを着込んでいましたが、なるべく薄着に慣れるようにしています。
同時に室内は暖房により乾燥しやすく、湿度が少ないので常に加湿を人工的に行う調整が必要です。

(北海道は冬場でもビール消費量、アイスの売れ行きも良いのは室温のせいかも)
昔は室内に洗濯物をかけ、ストーブの煙突に湯沸しタンクを付けており

外気(隙間)が自然に入り適度な湿度・換気が保たれていたと思います。


建物管理も大切です、東京に住んでいる時に一時自宅が空き家のときがあり、

冬に備えて水道管の水落とし作業をしたつもりでしたが、
翌年雪解け時家族で泊まったときに水道管の蛇口を開いた時なんと・・・・

天井、壁の内部から水があふれて室内は水浸し、てんやわんやな状況。
給水給湯管・カラン(鋳物)の凍結による破裂とトイレタンク、ボイラーの破損等

多大な被害が発生し大きな教訓を得ることになりました。
教訓=①水を落とし、的確に水抜き、②Uトラップ、トイレタンクには不凍液を注入、

③土台外部換気口を閉める等です。


部屋の冬支度としてあまり手を掛けませんが、床フローリングの上に置き敷きカーペット、

ラグマット並べ各カバー・クッションを暖色系にポイント的に衣変えすることで
温もりのイメージを出す工夫も寒さ対策のひとつとして感じています。


私たちを取り巻く環境は、自然と人との機能性が共有する空間です。

これからの冬の雪かきは大変ですが・・・・・しかし、なんといっても長い~冬を乗り越えて、

春の雪解けが始まる頃には一気に、ふきのとう、福寿草、新緑の芽が吹き

四季折々が身近に感じられて温もりの爽快な中で"ふゆ-じまい"が始まる。


建装部(札幌駐在) 相澤

クラヤミの旅

先日同室の佐伯とクラヤミ食堂というイベントに参加してきました。

テレビなどでご覧になってご存知の方も多いと思います。

 

このイベントの一番の特徴は、会場に入る前にアイマスクをつけ、まさに「暗闇」の中で知らない人と同じテーブルに付き、コース料理をいただくというものです。

 

このクラヤミ食堂は、「こどもごころ製作所」という博報堂さんのプロジェクトで年に4回程度、毎回異なったテーマ・趣向で行われてきましたが、今回は音楽とのコラボレーションということで、歌手の広瀬香美さんがプロジェクトに関わり、【クラヤミ食堂 × 広瀬香美 ~The dinner show~】という生演奏を聞きながらのクラヤミ食事体験となりました。

 

会場は赤坂にあるANAインターコンチネンタルホテル東京さん。

 

kurayami.jpg 

 

受付を済ませると、アイマスクを渡され、会場に入る前に着用します。隣の人の肩へ両手を乗せ、列車を作って会場へ入ると、一人一人にスタッフの方が付いて、それぞれ異なるテーブルへ導いてくれます。微妙なカーブを曲がるときに支えた手で方向付けをしてくれるのですが、感じとるのが難しく、従業員研修でも行うことがあるアイマスクでの誘導案内体験ではこういう気づきが得られるのだなと実感しました。

 

席へ着いても、会場のレイアウトも分からず、自分が会場のどの辺りにいるのか、テーブルが丸いのか四角いのかも分かりません。周りに人が座っているのかも分かりませんでしたが、次第に人が通り過ぎるときの風や体温、料理のかすかな香りなどで気配がつかめるようになります。不安な気持ちが徐々に好奇心に変わり、テーブルの上へ手を伸ばして得られる限りの情報をつかもうとします。

 

いよいよイベントが開始すると、まずは隣の席、向かいの席の方とクラヤミの中で自己紹介と握手。相手の顔が見えない分、手の暖かさや柔らかさ、声などからどんな人なのだろうと想像を膨らませます。

 

そして料理がスタートします。食前酒で手探りで乾杯をした後、前菜、スープ、メインと順々に料理が出てきます。ひとつひとつに広瀬さんの曲のテーマが関係しており、広瀬さんが一曲ずつ、料理の前にピアノを演奏しながら歌ってくださるのを聴いたあと、一斉に料理をいただきます。

 

広瀬さんの歌は、60人の客席では受け止めきれないくらいのパワーがあり圧倒されます。普通のライブではきっと広瀬さんのパワフルな演奏や歌い方に目を奪われてしまったと思いますが、耳だけで聴くと、最初の曲で少し緊張したような声の調子や、広瀬さん自身が持つポジティブな精神性がより強く伝わって来るような気がします。

 

お料理は、前菜は5つのスプーンに盛られているものを口に運ぶ易しいものから、コースが進むにつれ、徐々にナイフとフォークでお肉を切って口に運んだり、お皿の上の付け合せを探したりと、難易度が上がって行きます。食器の扱いの困難さは想定内だったものの、興味があったのは、見た目の盛付や色合いなど視覚的な要素が大きく影響する料理を、クラヤミで食べたとき、味覚がどのように変わるのだろうかということでした。

 

予想では、何を食べたかほとんど分からないのではと思っていましたが、むしろ料理への集中力が増したことで香りや食感など視覚以外の要素から得られる情報が沢山あり、想像がどんどん広がって、見た目で得られる以上の料理の味わい方になることを知りました(最後に正解写真が映写されましたが、結構当たっていました!)。

 

もう一つこのクラヤミ食事の大切な要素は、周りの人とのコミュニケーションです。連れとは意図的に席を離され、周りの人と視覚から得られる先入観なしに会話をしながら食事をすることは、不思議な場の温かさを生み出します。また人によって、暗闇で抱く料理への興味も違い、高級食材へ反応する人、食感を表現する人、料理の色を想像する人、食器の形を味わう人など、本当に様々です。それは自身の想像力を膨らませる助けになります。もしこのクラヤミの食事が1人だったら・・・修行のような食事体験になったでしょう。


加えて、お互いに見えていないという安心感があります。見えていたら・・・食事のマナーが気になったり、アイコンタクトを意識したり、スタッフの動きに目を取られたり・・・家だったらテレビも観ているでしょうか。クラヤミのシチュエーションでは、食べる、話す、聞くというそれぞれのシンプルな行為に集中することができ、それが却って豊かであることに気づかされます。

 

最後にこのクラヤミでの食事は、デザートの場面でマスクを外します。お互いに顔を見合わせたとき、不思議な親しみを感じている自分がいました。

そして帰り道、見慣れた景色がいつもと違って見え、鮮やかに視界に入ってきました。

この感じ、何かに似ていると思ったら、「旅」です。美味しいものを味わい、見知らぬ人とのコミュニケーションを楽しむ、帰ってくるとリフレッシュして日常生活をまた新鮮な気持ちで始められる・・・


会場で話をすると、リピーターの方が実に沢山います。この体験が一度味わうだけでは終わらない、不思議な魅力を持っているのも、旅だと思えば頷ける気がします。しかし、このクラヤミ体験で感じることはきっと人それぞれ、旅の宝サイトへのこじつけだと思われた方、百聞は一見にしかず、機会があれば是非体験されてみることをおすすめします。

 

kurayami_2.jpg 

最後に配られたメニュー

 

企画設計室 山上

 

情報収集のひとつに

入社して半年が経ちました。

建装部に配属されて1番初めに担当が決まったプロジェクトが、新築旅館の設計監理のお仕事です。
その中で今私が任せて頂いているのは、仕上げ材の選定です。
わくわくしながら取り掛かったのですが、始めてすぐに困惑しました。
学生の時の設計では、仕上げ材まで考えたことがなかったため、

どのように選べばよいかわかりませんでした。

 

その時、参考のひとつにしたのが、ソーシャルネットワーキングサービスmixiのコミュニティです。
趣味や職業などが共通の人同士が集まって情報交換などをするツールです。
そこにクロスや内装に関心がある人のコミュニティがいくつかあります。
クロス好きのコミュニティでは、500人近い方が参加しており、貼り替えたクロスの写真を公開していたり、

クロスのメーカーを紹介、またおしゃれな耐水壁紙のメーカーを知りませんかなど、

自分が求める情報に対して多くの人から返答を得ることが出来ます。

 

今回の物件は宿泊対象者の多くが学生になります。
そのため、若い世代の参加率が高いmixiは、若い世代にどのようなクロスが人気なのか、

実際貼ってみるとどのようになるのかなど参考になる例が多くありました。

 

私がmixiを始めたきっかけは、大学の設計の授業で、

非常勤の建築家の先生と授業の無い日にやりとりするためでした。
今後は、旅館やホテル、客室露天風呂のコミュニティなどを利用して、

仕事に活かせる情報を得る一つの手段として活用できたらと思います。

 

しばらくクロスやタイルと向き合っていると、家の中の仕上げ材を改めて見たり、

街を歩いている時、上を向いて歩いていたり、下をじーっと見ていたりというように壁や天井、

床の仕上げ材にばかり目がいくようになりました。
来月の始めに仕上げ材のプレゼンを行います。
自分が選んだものを気に入ってもらえたら嬉しいなと思います。

 

建装部 平井

フタを開けたら

先月工事をさせて頂いたホテルで、ロビーに使用されていたソファーの張替工事を受けました。

ソファーはアンティーク風の塗装がされたクラシカルなものでしたが今回の改修工事とのインテリアに統一感を持たすため、切れ地の張替えと木製フレームの塗装をする事になりました。

  

既存の生地を剥してみたら色々な問題が発生!!
①台座と脚部の接合部の強度不足
 フィンガージョイントの加工はして有りましたが、ズレていて接着剤のみでの固定
②ソフャー背面を支えるフレームと台座部の補強材がお粗末
 小さい木材を写真の様にする事のほうが難しいのでは?
③座面下側の補強不足

大きく以上の問題が挙がりました。今回は生地の張替と塗装直しの御依頼でしたが一部修理を行い、今後支障の無いよう使って頂けるよう手を加えさせていただきました。

 

修理内容
①台座と脚部の接合部補強は、台座裏より既存の台座カーブに併せた木材(ナラ材)にて補強。
②台座部には、新しい補強となる木材を入れなおす。
③各接合部には出来るだけ接着材を塗布
 ※写真で見られる青とオレンジのバンド(ウエービングテープ)は国産ですと既存の物より強度が有るので張り直しをしたいのですが骨組みの接合部がテープの強度に耐えられない恐れがある為今回はそのままとします。

 

miyahara_2.jpg  miyahara_3.jpg

 

海外で作られた物だと思われますが、15年前の物でもそれなりの金額がしたことでしょう。張替や塗装直しなどで修理をし、大切な思い出のある家具を永く使って頂けるお客さまは少なくなっていますし、そのような家具をお手元にお持ちの方も減ってきている中、今回の修理をさせて頂き、今後共責任を持ってメンテナンスをしていきたいと思います。

 

miyahara_7.JPG

 

 

建装部 宮原

お屋敷設計監理奮闘記

15年前位に高級住宅の設計監理業務を受託したときの話です。当初は私の担当課の仕事ではなかったのですが、他の課から異動してきた担当者Aが持ち込んできた仕事でした。担当者Aが異動してきてまもなく設計完了したので挨拶に伺ったところ、お客様(奥様)は設計図を見るなり「このような洋風の家の設計を依頼していませんよ。」と強い口調で不満をぶつけてきました。担当者Aはすっかり自信をなくしてしまい、私が担当せざるを得なくなってしまいました。その後、設計を0から再スタートしたわけですが、奥様との打合せ(会話)がどうしてもうまくいきません。お客様と私の生活レベルや価値観の相違がある上、図面を読めない奥様にいくら図面の説明をしても、理解してもらうことはもはや不可能かとまで思いました。

 

とにかく確認申請用の図面だけはなんとか承認をいただいたものの、これからどうやって意匠デザインを決めていこうか悩みました。室内の三次元パースを作成して検討資料にしようかと思い、見積を依頼したところ500万円かかるとのことで断念し、やっぱり自分が悩みながら、信頼をもらいながら決めていくしかないと決心しました。

 

延床面積で150坪くらいある家で、地下一階、地上2階、コンクリート造の天然スレート屋根、外壁は真っ白なライムストーンの豪邸です。各部屋の展開図を描きながら、部屋の室内パースを描いて、お客様に見てもらいながら確認していこうと思いました。パースには、床壁天井はもちろん、建具・木造作・造作家具・照明器具・冷暖房換気機器など、現れてくるものは全て描いていくことにしました。当初は、主要な部屋だけと思っていましたが、パースを使っての打合せだと理解しやすいらしく、要望も具体的に話していただけるので、浴室や廊下、ホール、化粧室、着付け室、書斎、寝室など気がついたら全部屋を描いていました。

 

後は仕上げ材のサンプルを見てもらって決めていけるかなと思っていました。しかし、そうは簡単にいきませんでした。「外壁の石を見に行きましょう。真っ白で柄や斑の全く無い石でなければいけません。」とおっしゃるのです。これは大変なことになった。現場所長と石工事業者と打合せして、原石からみせておかないと納得してもらうのは難しいという結論になりました。柄や斑の無い石などありえないからです。納得してもらえそうな原石が輸入されたという度に、お客様と同行で関が原に3回ほど出張して使う原石を決めましたが、製材する過程で柄や斑が出てきたものですから、その度に石材加工場に出向いてその石は北側の目立たないところに張ってくださいとか、石一枚一枚まで外壁のどこに貼るのかお客様と同行で決めるところまで行ってしまいました。
これらの現物主義による決定方法は、その後、衛生機器、水洗金具、照明、ドアハンドル丁番、ファブリックス、家具など全てにわたり、お客様は私と毎日のように都内のショールームを廻っては、納得できるものがないといって「他に何かないの?」と私を悩ませつづけました。

 

最後は庭園です。これまで住んでいた家の外構と庭園設計も有名な建築家に依頼しただけのことはあり、庭園とくに樹木に対するこだわりは尋常なものではありません。私も、庭園は私どもが紹介する専門業者にお願いしてください。と逃げようとしたのですが、そうはいきませんでした。庭園業者が所有する山があり、そこに樹木を見に行くからついてきなさい、ということになりました。敷地の入口にある門から玄関に至るアプローチに植える桜は、この家の景観の重要な要素であることは間違いありません。山の中を駆けずり回って候補となる桜を何本か決め、実際に現場に入れて植えてみることになりました。現場に持ってくると、山で採寸したにもかかわらずバランスが悪く、その後何回か山へ行かざるを得ませんでした。

 

竣工引渡以降、お客様からは全く連絡がなく、不都合があるはずだと思い担当者Aと一ヶ月位経ったときに訪問しました。奥様は満面の笑みで私たちを迎えてくれました。しかも担当者Aに花束まで用意して。

 

建装部・企画設計室 菅原 健二

こんな時こそ

旅館やホテルを経営している皆様には厳しい経営の時期が続いていると思います。でもこんな時期でも儲かっている施設や、工夫をして元気な施設があります。ちょっとのぞいてみようと思います。

 

ここはある温泉地にある日帰り貸切風呂を運営する施設です。

10棟のログハウス的な建物に露天風呂を2湯設け、室内は10畳ほどの広さを確保しています。日中から家族連れやアベック、おばさんたちのグループなどでかなり盛況です。夕方からは契約している旅館からお客様が来ています。旅館の貸切風呂としても稼動しています。
 

この施設は建築してまもなく4年を迎えようとしていますが借入金を返済して初年度から毎年3,000万くらいの利益を計上し順調に推移しています。この施設を建築しようと計画したときのオーナーの発想はこうです。
「この景気の悪いときに20代30代の子育てに大変な家族が記念日にいくら使えるだろうか?」からはじまりました。朝から車に乗って家族と観光地を見学する。昼に温泉につかってゆっくりした後、家族で食事をし、楽しい思い出を作る。ガソリン代や施設見学費、食事代を含めて総額12,000円ぐらいが限度か。温泉地に行くならいい旅館に泊まってゆっくりお風呂に入り おいしい食事をいただきたい。でも1人2万円も払うのは大変。それなら時間で割れば安く提供できる。お風呂を体験してもらえば温泉地の販促につながる。

こんな発想から出来上がったのがこの施設です。

  

建築的な工夫も凝らされています。自然の木々をいじめないように基礎を立ち上げてその上に施設を乗っけました。こうすると開発費用も安くおさえられ、固定資産になる割合も少なくてすみます。
お客様のために源泉を掛け流して魅力付けをし、利用料金は、1時間よりは2時間、2時間よりは3時間利用するほうが安くなるように設定しました。部屋はルームチャージで人数が多ければ多いほど1人あたりは安くなります。持ち込みも出前も自由で料金もかかりません。運営側としては、サービスもしないので人件費や経費が安く納まります。お客様には使いやすい施設作り、運営側としてはコストがかからない施設づくりができました。

 

景気の悪いときに世の中を嘆いていてもお客様は増えません。このオーナーのように発想をかえ、どうしたらお客様が喜ぶか、どうしたらコストを下げられるかを考えてみるいい機会だと思えばいいのかなと思います。

 

自分だけ得をするような発想ではいいものは作れないと考える毎日です。CO2削減が叫ばれる世の中です。無駄にしている温泉や水、電気などのエネルギーはありませんか。エコを工夫してお客様に喜ばれる施設に変身させるつもりはありませんか。今がそんな発想をする時期です。

 

建装部 中安

 

日頃、インテリア業界の方々のお話を伺う機会が多くありますが、最近特に「インテリアショップ」という形態が増えてきたように感じています。インテリア・家具業界は大きく3つに分かれるといわれますが、ひとつが家具製造メーカー、ふたつめが家具専門店(幅広い種類の家具を扱う大型店など)、それから、インテリアショップとよばれる形態がそれにあたります。

 

 

この三番目に挙げたインテリアショップは、ライフスタイルショップと呼ばれることもあり、それぞれ独自の商品コンセプトやインテリアスタイルを持っているのが特徴です。ライフスタイルは「生活様式」と訳せますが、例えば一口にモダン系の家具といっても、「和風モダン」「クラシカルモダン」「シンプルモダン」と種類もさまざま。個人的に、年々インテリアショップごとのオリジナリティや方向性に違いが出てきていると感じています。

 

 

先のインテリアショップの方々のお話によると、最近は特に「こういう暮らし方をしたい」と、インテリアのイメージや具体的な生活シーンを持って来店されるお客様が増えているのだとか。そこには、独自の価値観や生活習慣、個性や人生観までもが含まれているように思います。そう考えると、インテリアはそれらのこだわりを形にする手段として、とても有効なものといえるのではないでしょうか。

 

 

私自身も、宿泊施設様からインテリアコーディネートのご依頼を受ける際、常に「施設様のイメージや商品コンセプトを決して外さないこと」を強く意識しています。家具はもちろん、カーテンやベッドスローなどのファブリック、アートワークや小物・備品類に至るまで、ひとつひとつが施設様の印象をつくりあげる大切な要素。灰皿ひとつ選ぶのにも、決して妥協は許されません。

 

 

今は、お客様が旅行前に施設様の情報を簡単に得ることができる時代。だからこそ「宿の雰囲気やインテリアイメージが素敵だから、ぜひ一度ここに泊まってみたい」と、ホームページやパンフレットをご覧頂いたお客様の背中を後押しするような、そんなきっかけをつくれるインテリアコーディネートのご提案ができたらと日々考えています。

 

企画設計室 佐伯

 

 

saeki.jpg

 

 

助成金活用のすすめ

現在、四国のとある大型旅館様での従業員研修業務をお手伝いしています。
こちらの施設では、年間で4回に亙る研修を実施しますが、研修前からJTBのアンケートポイントが85点以上という高評価でしたので、どのポイントを強化したらよいかを探るために、事前に覆面のサービスチェックを実施しました。
その結果、サービスが我流で統一されていないこと、接客用語を中心とした言葉遣いが弱い点が明らかになり、言葉遣いに重点をおいた基本の接客ロールプレイング、新入社員へのサービスマナー教育、サービスレベルを維持するリーダーシップを養う管理職研修、という3点を重視したカリキュラムで研修を実施しています。

 

サービス業の商品は「人」とは言うものの、どうしてもハードの修繕、目に見えるものの改善が優先され、年に1度どころか数年に1回の教育もままならない実情の宿泊施設様が多い中、定期的な研修もしくはたった一度でも研修を実施される施設様の、教育に掛けられる思いには頭が下がります。

 

ところで、年間4回も研修を実施する前述の施設、税理士さんにお願いをして独立行政法人の雇用・能力開発機構の助成金制度を活用され、研修費用の負担を軽減しているとのこと。
これまでに業務を受託したいくつかの施設でも、この助成金制度を利用しているケースが見受けられましたが、案外認知度が低いのか、当社がお手伝いした施設様の中でもあまり活用されていないのが実態のようです。

助成対象の要件として、受講者の1/2以上雇用保険の被保険者であることや、全カリキュラムの8割以上に出席することなどの条件がある他、いくつかの認定条件があり、事業内職業開発計画など書類の提出が必要であるなど手続きの煩雑さはありますが、このような制度を活用できれば旅館・ホテル様の人材教育ももっと身近なものになるのではと思っています。

 

本当は人材教育にもっと手を掛けたい、そうお考えになるお客様の費用負担を幾分かでも軽減できるよう、当社のカリキュラム作成も、助成対象の認定条件に合わせ柔軟に対応いたします。
このような制度の理解を深め、皆様のお役に立つご提案をしたいと思います。

 

企画設計室 山上

建築コストが上昇傾向にあると言われていながらも、まだまだ工事するならお得と言える時期なのですが、思い切った投資も慎重に構えてしまう状況でもあるように思われます。
そんな中、数少ない旅館1棟新築物件の設計に携わっています。
5月の連休明けに着工したばかりで、完成が来年1月中旬、鉄筋コンクリート造5階建て客室数27室の旅館で、これから躯体が立ち上がってくるのが楽しみな物件です。
まだまだ建物の形が見えてきませんが、今回は設計段階で試みた製品を紹介させていただきます。

 

1階に大浴場を配置しているのですが、隣地境界から近いため、建築基準法上網入りのガラス窓としなくてはならず、景色が良い場所ではないのですが、クリアな視界をイメージしていました。
また、浴室で使用する網入りガラスは温度差による熱割れや水分の進入によるサビ割れが生じ易いため心配でもありました。
そこで、昔(10年以上前)使ったことのある網の入っていない耐熱ガラスを思い出し検討に掛かりました。
以前の製品はガラスのサイズも小さく、色も若干セピアがかっていて透明感がいまいちと言った感じでしたが、技術はここ10年の間に進歩し、一般ガラス同等の透明感でサイズも最大で3,000×2,400(8、10,12mm厚)mmまで可能になっていました。
一般名称は耐熱強化ガラス(大手ガラスメーカーはどこも製品あり)、その名称どおり耐熱性プラス強度が普通ガラスの6倍、一般強化ガラスの2倍という優れものです。
但し優秀な物にはそれなりの値段が付いてまわり、定価では普通ガラスと網入りガラスとの差は2割増し程度ですが値引率が圧倒的に異なり、見積価格で2~4倍の差が出てきます。
今後の取り扱い量の増加により値下げを期待したい製品ですので、ぜひ皆さんも使ってみてください。

 

takahasi_1.jpg

網入りガラス     耐熱強化ガラス

 

参考URL

旭硝子株式会社 https://www.asahiglassplaza.net/gp-pro/myboka/index.html

(上記画像は旭硝子株式会社のカタログより)

 

 

続いてもう一つ、同じ法的基準で防火区画というものがあり、階段室の鉄扉や吹抜けのシャッターなどが区画用の製品ですが、開口が大きくなるとシャッターレール用の柱が必要となったり、脇にくぐり戸が必要になったりしてせっかくの大空間が台無しになったりします。
そこで無粋な付属品を不要にする「耐火スクリーン」(ユニチカ設備技術)という製品をみつけました。
最大幅25m、高さ15mまでの防火区画をシリカクロス製の幕であたかもロールスクリーンのように降ろして区画するという画期的な製品です。
くぐり戸部分は避難口マークの付いた所をカーテンをくぐるように開閉して通行できます。天井内収納スペースもシャッターよりもコンパクトに納まり、軽いので建物への荷重負担も軽減できます。
8年程前に認定されたものですが、設置上の注意があり、ホテル・旅館など不特定多数が利用する避難階段など避難経路上の区画には原則使用できないという欠点があります。
日がまだ浅い製品なので今後の改良に期待するとともに、大空間吹抜けの竪穴区画など避難経路以外の区画には設置できるので検討してみてください。

 

参考URL

ユニチカ設備技術株式会社 http://www.unitika.co.jp/upec/article/unifireguard.html

 

 

建装部 高橋 慎一郎

同窓会

4月17日(土)に高校の同級生がマスターをしている盛岡(高校は釜石ですが)の店で、二人の先生を囲んで20人程のミニ同窓会をしてきました。
50歳過ぎのおじさん、おばさん達がこの時ばかりは18歳に戻って(酒は飲みますけど)いつもの同じ話題で盛り上がりました。

 

その1ヶ月程前、娘達のリクエストで、ホテルサンルートプラザ新宿のレストラン「VILLAZZA」に予約を取りに行きましたが、残念ながら週末は数週間先まで予約でいっぱいということでした。
娘達に「早く予約しないからだよ。」って怒られるだろうなという悲しさと、繁盛店になっているんだという嬉しさで複雑な心境になりました。

 

07年9月オープンのこのホテルで、レストランの内装を担当する機会をいただきました。
乗り込みから消防検査まで1ヶ月もない、非常に厳しい工期の現場でした。
毎日の様に業者・工場から「24」のジャック・バウアーのごとく瞬時の決断を求められ、毎日遅くまでの作業でした。特に消防検査と都庁の検査前日と言うか当日朝までは徹夜での作業に立ち合って、引き続きそのまま検査に立ち合うという、まさに「24」状態でした。

 

このレストランには自慢のワインセラーがあります。
ステンレス鏡面の枠は、いつも困ったときに助けてもらう〇〇シャッターの庄司さんが2週間程で制作してくれて、ギリギリ消防検査前日に取り付けることができました。特注のワイン棚は大阪の金物工場から送ってもらいました。

 

オープン翌年の6月、亡妻の誕生日に娘達と食事に行きました。食事の途中、松本シェフ、相馬さん、お店のスタッフの方達がテーブルの横に並んで「HAPPY BIRTHDAY」を唄ってくれようとしていました。大変失礼ながら遠慮させていただきましたが、嬉しかったです。
お店のスタッフの優しい心遣いで、妻を含め4人で楽しい時間を過ごすことができました。ありがとうございました。

 

その当時の工事のメンバーと会うと、いつも同じ話で盛り上がります。まるで、同窓会のように。
工事に携わった全ての人、そして松本シェフやお店のスタッフの方達も含めてこのレストランの同窓生です。

 

この仕事をしているとたくさんの同窓会ができます。

 

建装部 磯崎 昌志
VILLAZZA:http://www.hotelsunrouteplazashinjuku.jp/shinjuku-restaurants.php

最近、ある宿泊施設のアンケート制作および分析のお手伝いをさせていただいております。ほとんどの宿泊施設で宿泊アンケートを実施しており、回収したアンケート用紙を元に集計をし、総合(全体)○○点、大浴場△△点、料理□□点などと数値化をした上で、今後の目標設定や問題点の把握等に利用されているのではないでしょうか?

 

内容としては、記名・無記名の別はあるとしても、デモグラフィックデータ(年齢、性別、居住地域、職業など)と、お客様満足度(客室や大浴場などのハード、料理、サービスなどのソフトについて)を記入していただき、最後に感想やご意見といった自由記入欄を設けている構成が多いと思います。

それにプラスして、顧客属性(人数、媒体、予約経路、来館回数など)をチェックする宿泊施設もあります。

 

宿泊されたお客様のデータを集計して、お客様満足度の向上に努めることがいかに大事かはいまさら言うまでもありません。数値化したデータの分析およびフィードバックも大切ですが、自由記入欄に書かれたお客様の生の声をいかに今後の経営に反映させるかの方が、お客様満足度の向上に繋がるでしょう。

 

宿泊施設はお客様に館内利用とサービス(食事を含む)を提供しているのですが、意外とお客様の心の中を吸い上げることができません。「コミュニケーションで感想や意見を聞き取れる」という施設は別にして、ほとんどがアンケートに頼っているのが現状だと思います。だからこそ、アンケートの集計枚数を増やすために記名か無記名かとか、どの場所でどのように回収するのかとか、粗品をプレゼントするなどで集計枚数を増やす努力をされていると思います。

 

 

ただ、もったいないと思うことがあります。

せっかく努力をされているのですから、お客様の心の中をもっと覗きたいと思いませんか?「来館の目的は何か?」「何を期待しているのか?」「当館の看板商品は何か?」「なぜ当館を選んだのか?」等、これらが聞き出せれば、顧客層が絞れます。

デモグラフィック(統計学的)データではなく、サイコグラフィック(心理的特性)データが手に入るのです。つまり来館している顧客層のデータが取れるということは、狙いたい顧客層がわかるということです。(ただし、あまりにもお客様記入欄が多いと初めから記入するのを拒否されてしまう可能性がありますが・・・)

 

これが手に入れば次に欲しいデータは「顧客の心の中にある競合」ですね。 

 

企画設計室 新島 崇宏

 

 くしゃみと目のかゆさが酷くなり、気がつけば、上巳の節句は過ぎ、春ですね・・・。子供の頃は家族でお雛様を飾ることが年中行事でしたが、今ではお雛様を見るのは、仕事柄もっぱら旅館様のみ。各地で様々な姿のお雛様を見ることができ、発見を楽しんでいます。

 

 雛祭りで町おこしをする地方がありますが、お客様が気に入った旅館の雰囲気に相応しいからと貴重なものを寄附してくださることがあるようです。お茶道具が誰の手を渡ってきたかが価値とされるように、「モノ」にとっても、歴史や伝統を守る場所があり、人がいるということは、とても幸せなことだと思います。旅館はそんな「人」と「モノ」が詰まった「宝箱」であってほしいと願います。

 

 とは言え、旅館は見るものでなく、時間を過ごす場所であるとすれば、大事なのは「あたたかみ」。
 美容院で小さなお花のお雛様が飾ってあり、これは自分でも作れるかもと思ってパチリ。チマキに菊が乗っているような・・・と言っては、デザイナーさんに失礼ですね。とても有名な外国人デザイナーのフラワーショップの作品です。でも、がんばれば真似できそうですよね。出来上がりは不恰好かもしれませんが、そこは愛嬌、愛嬌。

 

 チマキと言えば形が似ていたからか、子供の頃、母と一緒に筍の皮で梅干を巻いて食べたことを思い出しました。梅干が酸っぱくて、結局一度しか作らなかったのですが・・・。子供の記憶力ってすごいですね。旅館でこのような素朴で簡単な手作りのおやつが出てきたら、懐かしかったり、珍しかったり、会話のきっかけになり、更に作り方を教えてくれたら、即席簡単クッキング教室の開講です。楽しい思い出となるのではないでしょうか。

 

企画設計室 下羽

shitaba.JPG

湯沸かし器といえば

 皆さんの施設では、熱源には何をご使用ですか?石油若しくはガスのボイラー、温泉熱が利用できる羨ましい施設様もあると思います。

 

 今回は、ガス給湯器を使用するシステムを紹介いたします。ガス給湯器(湯沸かし器)と聞くと、何かあると頭に血が昇り、湯気を出す上司を連想しますが、それとは逆にクールな利用方法を報告します。

 

 旅館様より浴室の全面改装の依頼を受け、熱源をどの様なシステムにするか悩んでいると、女将さんより「ガス給湯器を連結して使えるよ」とのご指示を頂きました。「ガス給湯器?」「容量は足りるの?」「壊れないの?」等の否定的な考えと、50号を16台連結するシステムと聞いたとき、常時使う機械と殆ど使われない機械が生じるのでは?やはり、否定的な考えしかないままガス会社よりシステムの説明を受けました。

 

 説明を聞いて目から鱗がポロリ!

 16台を連結してマイコン制御を掛けるとの事。今日、最初に作動した機械は次の日は16番目となり順番に1号機が移動し、年間平均するとどの機械もほぼ同じ作動時間になるとの事。容量も、計算式を確認すると更新前より増えていました。故障の場合も、一斉に故障することは考え難く、故障した1台の修理又は、交換で営業には殆ど影響が無いとの事です。貯湯タンクが不要になり、機械室スペースも小さくする事が出来ました。
 

 今回はガス湯沸かし器の報告でしたが、石油には石油の利点があると思いますし、新しいシステムも開発されていると思います。私共は、熱源=ボイラー等の画一的提案ではなく施設様に合った提案が出来るように、今後も情報収集・提供を行っていきます。
 

 仕事中にこのコラムを読んでいる貴方、隣の上司に見つかっていませんか?湯気を出している上司を見て「湯沸かし器」なんて思ってはいけません!湯沸かし器は、【賢い】の代名詞になるかも知れません。


建装部 笹川